昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~ (五十六)の四

2013-03-16 15:45:28 | 小説
(四)

「どうしたんだ? 
正三くんには会えただろう? 

喧嘩でもしたのか、うん? 
それとも変わってしまった正三くんに、驚いたのか? 

まぁ男というのは、三日会わぬと変わるものだからな。
まして、官吏さまとなると、いろいろあるだ……」

「タケゾー! タケゾーのせいよ! 
タケゾーのせいで、わたしの人生は無茶苦茶よ。

あの人は、正三さんじゃない! 
わたしの正三さんじゃない。

別人よ、他人よ。
タケゾーのせいよ、タケゾーの……」

激しく慟哭しながら、武蔵の胸を叩く。
弱々しいそれがそして声が、小夜子の衝撃の深さを表している。

「タケゾーよ、タケゾーが悪いのよ。
タケゾーのせいよ、全部。」

儀式の筈だった、単なる儀式になる筈だった。
今更正三と結ばれるなどとは考えていない小夜子だった。

武蔵との幸せな人生を、贅沢三昧の生活を送るこれからを見せる。
まさに正三へのあてつけの筈だった。


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