昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~(八十四) 小夜子さま、大変身ですね

2014-04-12 21:25:34 | 小説
(一)

小麦色に焼けた小夜子に、富士商会の面々が一様に驚いた。

「小夜子さま、大変身ですね」
「すごく健康的で、一段と美人に見えますです、はい。」

小夜子さまなら、ミスユニバースに、あ、だめか。ミセスなんだ、もう」
口々に褒めそやす。その一人一人に
「ありがとう、お世辞でも嬉しいわ」
と、満面の笑みを湛えて応える小夜子に、蔵はうんうんと頷いている。

「みんな聞いてくれ。小夜子を、社長付き営業部員とすることに決めた。
簡単に言えばだ、接待役だな。

交渉事はしないけれども、場に同席させる。
どんどん取引先を、会社に引っ張って来い」

「やったあ!」
「うわあ、すてきぃ!」
「よおし、これでもう万々歳だぜ」

万歳をする者、拳を突き上げる者、拍手をする者。
そして、泣き出す者さえ出た。

「おいおい、どうした。泣くことはないだろうが。」
「だって、だって…。これでもう、悪口を言われずにすむかと思うと。
嬉しくて嬉しくて、涙が、勝手に出ちゃうんです」

「そうか、そうか。女子社員には、苦労をかけるな。
嫌がらせの電話が時々入っているらしいが、もう大丈夫だぞ。

そんな電話はな、みーんな小夜子に回せ。
ガツンと叱ってくれるさ」

突然に武蔵から話を振られた小夜子、事態が飲み込めずにキョトンとしている。


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