(八)
「こら、れい。まだ良いとは。まったく、親の言うことを聞かん奴だ。
えっと、みたらいさん、ですか?
ほお、会社経営を。雑貨品と言いますと、主にどんなものを?」
しげしげと名刺を見ながら、先ほどまでの警戒心が嘘のような態度で接してきた。
「なんでもです。GHQ関連からスタートしましてね、今は種々雑多ですよ。
この間東北に行きまして、南部鉄の商品を扱うことにしました。
こちらでは、どんな特産品がありますかな?
まだ九州産は扱っていませんが」
「そうですか、そうですか。まあ九州と言いましても、それぞれの県に特産がありましてね。
全国的に有名と言えば、陶器なんかもその一つでしょうな。
隣の県ですが、佐賀にですな、伊万里焼と有田焼というものがあります」
焼き物に興味を抱いている娘の父親、己の自慢話の如くに東陶と話し始めた。
他の家人たちは、そそくさとその場を立ち去っていく。
「あまり遅くならないうちにお帰りくださいよ」
と、連れ合いが。そして、老人が苦言を残していった。
「甘やかしすぎだ、れいを」
「大丈夫ですよ、お義父さん」
と立ち上がって、最敬礼を見せた。
「婿養子でしてね、わたし。ましかし、跡取りを作れたんだから。
ある意味、お役御免ですわ。れいが生まれた時は、散々でした。
まるで種馬扱いです、ひどいものです。
でね、やっと隼人が生まれてくれたんで、大事にしてもらえるかと思いきや。
どうしてどうして。『実家に帰りたくないか?』などと言われる始末ですよ」
たばこを取り出して武蔵に勧めながら、
「これもなんです。家の中では、吸わせてもらえんのです。
義父が吸いませんのでね、外ですよ。
まあね、義父が死んだらねえ、そこら中で吸ってやろうと思っているのですが。
案外そこら辺りを気にしてるのですかな?
家風といったものを重んじる家ですから」
「こら、れい。まだ良いとは。まったく、親の言うことを聞かん奴だ。
えっと、みたらいさん、ですか?
ほお、会社経営を。雑貨品と言いますと、主にどんなものを?」
しげしげと名刺を見ながら、先ほどまでの警戒心が嘘のような態度で接してきた。
「なんでもです。GHQ関連からスタートしましてね、今は種々雑多ですよ。
この間東北に行きまして、南部鉄の商品を扱うことにしました。
こちらでは、どんな特産品がありますかな?
まだ九州産は扱っていませんが」
「そうですか、そうですか。まあ九州と言いましても、それぞれの県に特産がありましてね。
全国的に有名と言えば、陶器なんかもその一つでしょうな。
隣の県ですが、佐賀にですな、伊万里焼と有田焼というものがあります」
焼き物に興味を抱いている娘の父親、己の自慢話の如くに東陶と話し始めた。
他の家人たちは、そそくさとその場を立ち去っていく。
「あまり遅くならないうちにお帰りくださいよ」
と、連れ合いが。そして、老人が苦言を残していった。
「甘やかしすぎだ、れいを」
「大丈夫ですよ、お義父さん」
と立ち上がって、最敬礼を見せた。
「婿養子でしてね、わたし。ましかし、跡取りを作れたんだから。
ある意味、お役御免ですわ。れいが生まれた時は、散々でした。
まるで種馬扱いです、ひどいものです。
でね、やっと隼人が生まれてくれたんで、大事にしてもらえるかと思いきや。
どうしてどうして。『実家に帰りたくないか?』などと言われる始末ですよ」
たばこを取り出して武蔵に勧めながら、
「これもなんです。家の中では、吸わせてもらえんのです。
義父が吸いませんのでね、外ですよ。
まあね、義父が死んだらねえ、そこら中で吸ってやろうと思っているのですが。
案外そこら辺りを気にしてるのですかな?
家風といったものを重んじる家ですから」
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