昭和の恋物語り

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長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~(八十三) 主にどんなものを?

2014-04-10 20:30:13 | 時事問題
(八)

「こら、れい。まだ良いとは。まったく、親の言うことを聞かん奴だ。
えっと、みたらいさん、ですか? 
ほお、会社経営を。雑貨品と言いますと、主にどんなものを?」

しげしげと名刺を見ながら、先ほどまでの警戒心が嘘のような態度で接してきた。

「なんでもです。GHQ関連からスタートしましてね、今は種々雑多ですよ。
この間東北に行きまして、南部鉄の商品を扱うことにしました。
こちらでは、どんな特産品がありますかな? 
まだ九州産は扱っていませんが」

「そうですか、そうですか。まあ九州と言いましても、それぞれの県に特産がありましてね。
全国的に有名と言えば、陶器なんかもその一つでしょうな。
隣の県ですが、佐賀にですな、伊万里焼と有田焼というものがあります」

焼き物に興味を抱いている娘の父親、己の自慢話の如くに東陶と話し始めた。
他の家人たちは、そそくさとその場を立ち去っていく。

「あまり遅くならないうちにお帰りくださいよ」
と、連れ合いが。そして、老人が苦言を残していった。

「甘やかしすぎだ、れいを」

「大丈夫ですよ、お義父さん」
と立ち上がって、最敬礼を見せた。

「婿養子でしてね、わたし。ましかし、跡取りを作れたんだから。
ある意味、お役御免ですわ。れいが生まれた時は、散々でした。
まるで種馬扱いです、ひどいものです。
でね、やっと隼人が生まれてくれたんで、大事にしてもらえるかと思いきや。
どうしてどうして。『実家に帰りたくないか?』などと言われる始末ですよ」

たばこを取り出して武蔵に勧めながら、
「これもなんです。家の中では、吸わせてもらえんのです。
義父が吸いませんのでね、外ですよ。
まあね、義父が死んだらねえ、そこら中で吸ってやろうと思っているのですが。
案外そこら辺りを気にしてるのですかな? 
家風といったものを重んじる家ですから」


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