昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

[ブルーの住人]第七章:もう一つの 「じゃあず」(五)

2024-08-03 08:00:16 | 物語り

豪華なステレオー装飾も派手で、
胴体の色は銀一色で前面にジャガード織りの布がかけられている。

さらに豪華という表現を満足させるのは、
スイッチなどの操作が必要のない、全てオートマチックということだ。

唯一気になるのは、ジャガード織りの中央に、レンズのような物があることだ。

夕方になると、太陽光線を反射するのかキラリキラリと光る。

そしてそのステレオの上の壁には、
その艶やかな肌に不覚ナイフの傷跡を残し、それでも穏やかな表情の能面があった。

そう言えば、食事に出される食器からナイフがなくなったのは、
その傷跡が付いた後だったような…。

今は亡き母にも似たその面は、
生きている人間の意思など無視しがちなある種の威厳を感じさせ、
部屋全体に重くのしかかっていた。



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