昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

大長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~ (六十三)の三

2013-06-05 17:31:24 | 小説
(三)

そして今日。

突き抜けるような青空の下、黒塗りのハイヤーが埃を巻き上げて走っている。
ゆっくりとした速度で、竹田の本家へ向かって走っている。

神社での式を終えた武蔵が、満面の笑みで車から降り立った。
少し遅れて小夜子が、緊張の面持ちで降り立った。
差し出す武蔵の手をしっかりと握って降り立った。

紅白の幕で飾られた門の前で待つ本家の大婆が、満足げに頷いている。

「うんうん、立派なお婿さんじゃて。
でかしたの、小夜子。

おぉ、美しい花嫁姿じゃ。
うんうん、うんうん。」


続いて、茂作翁と繁蔵が後続の車から降りた。
「婆さま、大丈夫ですかいの? 

中で待っておれば良いのに。
ふらつきませんですかの?」

繁蔵が心配げに声をかける。

「年寄り扱いするでね!」
かくしゃくとした動きで、武蔵と小夜子を招き入れた。


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