昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

大長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~ (六十三)の四

2013-06-06 21:56:39 | 小説
(四)

「えぇ婿さんじゃ。のぉ、小夜子。
でかしたぞ、ほんに。

お前のおっ母さんにはがっかりさせられたが、
小夜子を産み落としたことは認めてやらねばの。」

“この婆さまが、母ちゃを殺したんだ。”

恨みの炎が、小夜子の目に宿る。
と共に、ほぼ直角に曲がった腰が、痛々しく小夜子に映る。

齢、百歳を超えたはずの大婆。
当主である繁蔵に対してあれこれ指図する様は、一種異様な趣を漂わせる。

「隠居しても良かろうに、なんで固執するかのぉ?」

「繁蔵さんではなくて、嫁の方じゃて。初江さんよ。」

「そうそう。嫁に牛耳られるのが、癪なようじゃわ。」


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