(八)
「小夜子。
どうだ、中華そばを食べに行かんか?
若い者たちが食べたらしいんだが、美味いと言ってる。」
「行く、行く。おいしいもの、食べたい。
お腹減っちゃった。お昼、食べ損ねちゃったの。着替えてくるね。」
初めて入る大衆食堂。雑然としたテーブルの並べ方に、驚く小夜子だった。
「タケゾー、ここ大丈夫なの?」
不安気な顔つきの小夜子に、
「大丈夫って、なにがだ?」
と、素知らぬ顔で聞き返す武蔵だ。
ぷーっと頬を膨らます小夜子に、指で頬を武蔵が押した。
「心配するな、大丈夫さ。
それなりに衛生面には気を使ってるさ。
それより、案外こういった小汚い店の料理が美味いと言うぞ。
さあさあ、座れ座れ。」
「何だか嬉しそうね、タケゾー。」
「あぁ、嬉しいさ。
会社を興した時は、もっと汚い場所だった。
訳の分からん肉やら、爆弾と言う名前のアルコールを飲んだりしたんだ。
懐かしいぞ、ほんとに。」
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