昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~ (五十六)の八

2013-03-20 17:34:09 | 小説

(八)

「小夜子。
どうだ、中華そばを食べに行かんか? 

若い者たちが食べたらしいんだが、美味いと言ってる。」

「行く、行く。おいしいもの、食べたい。
お腹減っちゃった。お昼、食べ損ねちゃったの。着替えてくるね。」

初めて入る大衆食堂。雑然としたテーブルの並べ方に、驚く小夜子だった。

「タケゾー、ここ大丈夫なの?」

不安気な顔つきの小夜子に、
「大丈夫って、なにがだ?」
と、素知らぬ顔で聞き返す武蔵だ。

ぷーっと頬を膨らます小夜子に、指で頬を武蔵が押した。

「心配するな、大丈夫さ。
それなりに衛生面には気を使ってるさ。

それより、案外こういった小汚い店の料理が美味いと言うぞ。
さあさあ、座れ座れ。」

「何だか嬉しそうね、タケゾー。」

「あぁ、嬉しいさ。
会社を興した時は、もっと汚い場所だった。

訳の分からん肉やら、爆弾と言う名前のアルコールを飲んだりしたんだ。
懐かしいぞ、ほんとに。」


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