(五)
「ところで女将。露天風呂は、僕の貸切りみたいなものですね?」
「左様でございます、ごゆっくりお入りください」
「女将と一緒できたら、一生の思い出になると思うんだけれども。
どうにも男と言う者は仕方がない。綺麗な花を見ると、つい手にとってみたくなる」
女将の顔を窺いつつ、探りを入れてみた。
「まあまあ、嬉しくなることを仰られて。
あたくしも社長さまと、湯船で差しつ差さされつとまいりたいもので。
ご酒はお強いのでしょ? あたくし下戸なくせに、大好きでございまして。
酔いましたら、介抱してして頂けますでしょうか?」
色香たっぷりに、ぬいが科を作った。
「もちろんだよ、女将。とことん介抱させてもらいます。
しかし女将、そんなことを言いつつも、案外底なしのうわばみじゃないのかな?
東北人が下戸だと言っても、とてものことに信じられないことだからね。
まあいい、それは今夜分かることだし」
「あらあら、社長さま。今日の今夜というわけにはまいりませんわ。
あたくしも一応は、女の端くれでございます。
物事には順序と言うものがございますわ。それに、心の準備も致しませんと。
ということで、次回のお泊り時にでも。その折を心待ちにしております」
やんわりと断る様は、実に堂にいったものだ。
「いや参った、うまく逃げられてしまった。
次回の宿泊時には、他の客が居るからとか何とか、そう言って逃げるわけだ。
そして次々回の泊りを期待させるわけだ。
女将、この手で何人の常連客をつかんでいるんだい」
「ところで女将。露天風呂は、僕の貸切りみたいなものですね?」
「左様でございます、ごゆっくりお入りください」
「女将と一緒できたら、一生の思い出になると思うんだけれども。
どうにも男と言う者は仕方がない。綺麗な花を見ると、つい手にとってみたくなる」
女将の顔を窺いつつ、探りを入れてみた。
「まあまあ、嬉しくなることを仰られて。
あたくしも社長さまと、湯船で差しつ差さされつとまいりたいもので。
ご酒はお強いのでしょ? あたくし下戸なくせに、大好きでございまして。
酔いましたら、介抱してして頂けますでしょうか?」
色香たっぷりに、ぬいが科を作った。
「もちろんだよ、女将。とことん介抱させてもらいます。
しかし女将、そんなことを言いつつも、案外底なしのうわばみじゃないのかな?
東北人が下戸だと言っても、とてものことに信じられないことだからね。
まあいい、それは今夜分かることだし」
「あらあら、社長さま。今日の今夜というわけにはまいりませんわ。
あたくしも一応は、女の端くれでございます。
物事には順序と言うものがございますわ。それに、心の準備も致しませんと。
ということで、次回のお泊り時にでも。その折を心待ちにしております」
やんわりと断る様は、実に堂にいったものだ。
「いや参った、うまく逃げられてしまった。
次回の宿泊時には、他の客が居るからとか何とか、そう言って逃げるわけだ。
そして次々回の泊りを期待させるわけだ。
女将、この手で何人の常連客をつかんでいるんだい」
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