昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

鼠小僧次郎吉 ~さると猿回し~ 十六

2010-08-12 18:38:59 | 小説
「コトッ。」

裏木戸は、
易々と開いた。
次郎吉は、
ニヤリとほくそ笑みながら、
足音を押さえて中に入った。

勝手知ったる何とやらで、
次郎吉は何の苦もなく
長局奥向に続く廊下に足を乗せた。

と、
どこから見ていたのか。

足を乗せた途端、
隠れる間もなく武装した腰元らが、
奥の部屋から並び出てきた。

不意のことに次郎吉は一瞬たじろいだが、
すぐさま気を取り直すと
一目散に裏木戸から逃げ出した。

“何てこった!”と、
口走りながら塀に沿って走り続けた。

成功するに決まっていたこの盗みが、
何故バレていたのか。
次郎吉には、
どうしてもあの腰元が裏切ったとは思えなかった。

角を左に折れて、
もう大丈夫だと思った途端、
運悪く南町奉行所の見回り同心に
見咎められてしまった。

逃げる間もなく召し捕らえれ、
後ろから追いかけてきた腰元たちにより、
悪事が露見してしまった。

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