(三十六)
と、自然が俺の味方をしてくれた。
山の下から吹き上げる風が、見事に真理子ちゃんのスカートを捉えた。
「キャッ!」
真理子ちゃんが奇声を発し、左手でスカートを押さえ右手で顔を覆った。
確かに見えた、白い物が。
それはほんの一瞬のことだ、だから俺は見えなかったと答えた。
しかしなおも、「うぅーん、見たでしょ!」と、詰問された。
見たと言えば、その場が落ち着きそうな気がしたので、実は見たと答えた。
ところが俺の予想に反して、「いや、エッチ!」と、強烈に言われた。
「馬鹿ね。こういう時は見えなかったって、言いはるものよ。」
苦笑いの事務員さんに、たしめられた。
「いや、ホントは見てないよ。
だけど、見たと言わないと収まりがつかないような気がしたから。
ホント、見てないって。
埃が目に入って、閉じちゃったんだって。
こんなことなら見れば良かった。
損したよ、ホント。」
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