昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

昭和の恋の物語り (三十六)

2013-02-16 13:24:04 | 小説


(三十六)

と、自然が俺の味方をしてくれた。
山の下から吹き上げる風が、見事に真理子ちゃんのスカートを捉えた。

「キャッ!」

真理子ちゃんが奇声を発し、左手でスカートを押さえ右手で顔を覆った。
確かに見えた、白い物が。

それはほんの一瞬のことだ、だから俺は見えなかったと答えた。
しかしなおも、「うぅーん、見たでしょ!」と、詰問された。

見たと言えば、その場が落ち着きそうな気がしたので、実は見たと答えた。
ところが俺の予想に反して、「いや、エッチ!」と、強烈に言われた。

「馬鹿ね。こういう時は見えなかったって、言いはるものよ。」
苦笑いの事務員さんに、たしめられた。

「いや、ホントは見てないよ。
だけど、見たと言わないと収まりがつかないような気がしたから。

ホント、見てないって。
埃が目に入って、閉じちゃったんだって。

こんなことなら見れば良かった。
損したよ、ホント。」




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