昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

にあんちゃん ~二十年前のことだ~ (三)

2016-01-16 12:27:30 | 小説
 孝道の懇意にする産婦人科医の計らいで、孝男・道子夫妻の実子として届けられた。
孝男によって、長男と書いてナガオと呼ぶ名前が届けられた。

皮肉なことに、その二年後に次男が授かった。
不妊治療に通うことをやめて後の妊娠だった。
気持ちに余裕の出来た道子ゆえのことなのか、孝男に「あの金はなんだったんだ」と、嫌味の言葉を受ける道子だった。

 孝男の長男に対する無関心さは、実子でないからという理由があった。
しかし次男に対しても無関心な孝男の心底が分からない。
名前からして「第一子が長男なら第二子は次男にすべきだろうが」と、届けられてしまった。

 子育ての手伝いなど期待するわけではなかったが、滅多に居ない休日にほんの少しの時間でも長男の遊び相手をと言う道子に対し、孝男の返事は冷たいものだった。

「俺は闘っているんだ。お前たちの暮らしを守るために、少しでも早く高い地位に就きたいんだ。
たまの休日ぐらいはゆっくりさせてくれ」

孝男の銀行における激務については、一年足らずとはいえ道子もまた銀行の窓口業務に就いていたのだ、良く分かっている。
しかし孝男の子どもたちに対する愛情の薄さには納得がいかない。
道子の知る父親像とはまるで違う孝男に、戸惑いを感じた。


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