(四)
「まあ、その話は後日ということで。
今日は小夜子ですわ。
茂作の所に挨拶でしょうな。
その後、本家の方にも寄ると思いますでの。
助役さん、あんたが役場を代表しての。
分かるじゃろ?」
ひそひそと密談を交わした後に、意気揚揚と引き上げていく繁蔵。
村長のかける声に気付かぬふりをして、そそくさと引き上げた。
“ふん。あんな男なぞ、呼んでなるものか。”
繁蔵が役場を出ると同時に、タクシーが止まった。
「あのぉ。竹田茂作さんのお宅は、どちらになりますか?」
と、運転手が声をかけてきた。
「役場に戻って、誰かに聞いてくれ。」
木で鼻をくくったように、富雄が答えた。
憮然とする運転手に、武蔵が声を掛けた。
「役場に戻って聞くしかないだろう、運転士さん。」
小夜子が同乗しているのだ、分からぬ筈がない。
しかし小夜子は素知らぬ顔で、目を閉じている。
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