「ほら、次だ!」
シン公の大きな手が、アコの頭を包みます。
暖かい、手でした。
「ア・コ・ハ・オ・レ・ガ・ス・キ」
「へぇー、そうかい?アコは、俺が好きなんだ。」
「バカ!知らない!イーだ!」と、口を尖らせるアコでした。
「それじゃ、これだ。」
「オ・レ・ハ・ア・コ・ガ・キ・ラ・イ。えぇ、いじわるう! それじゃ、こんどはあたしのばんよ!」
アコはすぐにシン公の後ろに回り、大きな背中に小さく書きました。
「なに? そんな小さくちゃ、分かんないぞ! うん? キ・ス…キス?」
シン公の素っ頓狂な声に、アコはプウー! とほほをふくらませました。
「もお、シンちゃんの、えっちぃ! スキって、かいたのよ。それを、最初のスだけ、いわないんだから!」
アコは不満げな声を出しながら、シン公の背中に耳を当てました。
力強い心臓の鼓動が、アコの耳に心地よく響きます。
アコは、シン公の本心が知りたいのです。
“好きだから、こうやって、一緒に歩くんじゃないか”と、シン公は言います。
だけれども、アコには物足りないのです。
アコの気持ちは、loveなのです。
でもシン公は、likeのようなのです。
同じスキでも、微妙に違うのです。
心とは裏腹に、アコはシン公にぶーたれることが多いのです。
逆らうことが多いのです。
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