(九)
「お父さん。
あたし、武蔵に嫁ぎます。決めたから。」
「いやしかし、正三と……」
“すぐに了承してはわしの沽券に関わるわ。”
とばかりに、言葉を濁した。
茂作の心内には、佐伯本家の跡取息子である正三の嫁があった。
正三には冷たくあしらう言葉を投げつけてはいたが、心底では願っていることだった。
それが茂作にとって、どれ程の誉れになることか。
常に見下す竹田本家に対して、同等もしくは格上となれるのだ。
「それに、もう……」
ポッと頬を染める小夜子。
「ま、まさか、お前……」
“お前の母親の澄江も無鉄砲なことをしよったが、小夜子、お前もか。
血は争えぬ、と言うことか……。”
「順序があと先になってしまいましたことは、重々お詫びします。
わたしの焦りから、小夜子を…。
ですが、決して不自由な思いはさせません。
どうぞ、お認めください。」
武蔵が改めて深々とお辞儀をし礼を尽くすと、時を待っていたかの如くに
「茂作よ、わしだ。
助役さんと一緒でな、どれ上がるぞ。」
と、繁蔵から声がかかった。
「お父さん。
あたし、武蔵に嫁ぎます。決めたから。」
「いやしかし、正三と……」
“すぐに了承してはわしの沽券に関わるわ。”
とばかりに、言葉を濁した。
茂作の心内には、佐伯本家の跡取息子である正三の嫁があった。
正三には冷たくあしらう言葉を投げつけてはいたが、心底では願っていることだった。
それが茂作にとって、どれ程の誉れになることか。
常に見下す竹田本家に対して、同等もしくは格上となれるのだ。
「それに、もう……」
ポッと頬を染める小夜子。
「ま、まさか、お前……」
“お前の母親の澄江も無鉄砲なことをしよったが、小夜子、お前もか。
血は争えぬ、と言うことか……。”
「順序があと先になってしまいましたことは、重々お詫びします。
わたしの焦りから、小夜子を…。
ですが、決して不自由な思いはさせません。
どうぞ、お認めください。」
武蔵が改めて深々とお辞儀をし礼を尽くすと、時を待っていたかの如くに
「茂作よ、わしだ。
助役さんと一緒でな、どれ上がるぞ。」
と、繁蔵から声がかかった。
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