(八)
「それは……。
だって仕方ないじゃない!
正三さん、ちっとも連絡くれないんだもの。
それに、アーシアが……」
「お義父さん。それについては、わたしから。
小夜子の気持ちは、今でも変わっていません。
小夜子は、お義父さんに安楽な生活を送っていただきたいと。
それだけを念じていたのです。」
茂作の前に風呂敷包みが差し出された。
何ごとかと目を上げる茂作に、
「これは支度金でございます。
これで小夜子の嫁入り支度を整えてやってください。
それから、ダイア商会のことはご心配なく。
全て済んでおります。」
と、小声で耳打ちした。
「お義父さんは小夜子の大切な家族です、粗略に扱うことは決してありません。
これからも充分なことをさせて頂きますので。
何かご要望がありましたら、会社の方にご連絡頂ければすぐにも。」
小夜子に知られたくないことがまだあるのなら、武蔵の方で始末を付けますと付け足した。
「べ、別にあんたに始末を付けてもらうこともなかったが、
まぁ取り合えず、礼を言っておこうかの。」
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