昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~ (五十七)の七

2013-04-01 22:05:28 | 小説

(八)

「それは……。
だって仕方ないじゃない!
 
正三さん、ちっとも連絡くれないんだもの。
それに、アーシアが……」

「お義父さん。それについては、わたしから。
小夜子の気持ちは、今でも変わっていません。

小夜子は、お義父さんに安楽な生活を送っていただきたいと。
それだけを念じていたのです。」

茂作の前に風呂敷包みが差し出された。

何ごとかと目を上げる茂作に、
「これは支度金でございます。
これで小夜子の嫁入り支度を整えてやってください。

それから、ダイア商会のことはご心配なく。
全て済んでおります。」
と、小声で耳打ちした。

「お義父さんは小夜子の大切な家族です、粗略に扱うことは決してありません。
これからも充分なことをさせて頂きますので。
何かご要望がありましたら、会社の方にご連絡頂ければすぐにも。」

小夜子に知られたくないことがまだあるのなら、武蔵の方で始末を付けますと付け足した。

「べ、別にあんたに始末を付けてもらうこともなかったが、
まぁ取り合えず、礼を言っておこうかの。」


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