昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

「祭りの夜(改)」 十二

2013-06-29 18:36:33 | 小説
(十二)

男は大声を上げて、へび女とへびの格闘を面白おかしく講釈し続けている。

何せ薄暗い照明で、更には離れた場所だ。
はっきりと見えているわけではない。

「へび以外の食べ物を一切受け付けない特異体質になってしまい、
今に至っておりまする~、哀れな娘なのでございます~。

わたくしどもも~、正直のところ困り果てて~いるのでございま~す。
暖かい内は、へびも捕まえられまする~。
がしかし~、冬の寒~い季節ともなりますとぉ~、へびも冬眠してしまいまする~。

早く、わたくしどもと~同じ白いご飯を口にしてくれぬかとぉ~、
そう願っているのでございまする~。」

周りからは時折失笑が洩れている。
しかし私と友人は、そんな口上を信じ込んでしまった。

「よーし、俺がへびを差し入れてやろうか! 明日にも持って来てやるぞ!」
そんな観客の掛け声が、二人にとっては心ない暴言に聞こえて、腹を立てあったものだ。


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