やっと牧子の暮らしぶりに話題が移り、彼は身構えながら聞き耳を立てた。
「まあ、ねえ。なかなかうまくいかないのよ。何度かお見合いはするんだけど、こればっかりはねえ。
といって、変な妥協だけはしたくないし。もう今じゃ、誰も話を持ってきてくれないわ。
そろそろ三十路も近いことだし、とは思うんだけど。
それに、実家がうるさくって。今、思案中なの」
「そうなの。あんたみたいな家庭的な女性は、そんじょそこらには居ないのにねえ。
器量だって申し分ないし。どうして、縁がないのかねえ。
何だったら、おばさんも探してあげようか?
といって、当てがあるわけじゃないんだけど。でもホントに、居ないのかい?」
心底心配してくれる管理人の言葉に、牧子は痛みを感じた。
上司との逢瀬の為に、このアパートを引き払った牧子だった。
何くれと世話を焼いてくれる管理人に、疎ましさを感じての引っ越しでもあった。
「いやあねえ、居ないわよ。居たら、ボクちゃんとデートなんかしないわよ」
大きく笑う牧子に、彼もまたつられて笑ってしまった。
「そう言えば、御手洗さん。あの彼女は、どうしたの? 最近は、全然顔を見ないけど。喧嘩でもしたの?」
突然、管理人が彼に声をかけた。虚を突かれた彼は、一瞬言葉を失った。
思わず、牧子の顔色を窺ってしまった。
牧子は、にこやかな表情で
「あらあら、彼女が居るの? 今度、紹介しなさいよ。
どんな女性なの? やっぱり、学生さん? お母さんは、知ってるの?」
と、矢継ぎ早に質問責めをしてきた。
彼はホッとしつつも、”異性として見てくれていないのか”と、一抹の寂しさも覚えた。
「まあ、ねえ。なかなかうまくいかないのよ。何度かお見合いはするんだけど、こればっかりはねえ。
といって、変な妥協だけはしたくないし。もう今じゃ、誰も話を持ってきてくれないわ。
そろそろ三十路も近いことだし、とは思うんだけど。
それに、実家がうるさくって。今、思案中なの」
「そうなの。あんたみたいな家庭的な女性は、そんじょそこらには居ないのにねえ。
器量だって申し分ないし。どうして、縁がないのかねえ。
何だったら、おばさんも探してあげようか?
といって、当てがあるわけじゃないんだけど。でもホントに、居ないのかい?」
心底心配してくれる管理人の言葉に、牧子は痛みを感じた。
上司との逢瀬の為に、このアパートを引き払った牧子だった。
何くれと世話を焼いてくれる管理人に、疎ましさを感じての引っ越しでもあった。
「いやあねえ、居ないわよ。居たら、ボクちゃんとデートなんかしないわよ」
大きく笑う牧子に、彼もまたつられて笑ってしまった。
「そう言えば、御手洗さん。あの彼女は、どうしたの? 最近は、全然顔を見ないけど。喧嘩でもしたの?」
突然、管理人が彼に声をかけた。虚を突かれた彼は、一瞬言葉を失った。
思わず、牧子の顔色を窺ってしまった。
牧子は、にこやかな表情で
「あらあら、彼女が居るの? 今度、紹介しなさいよ。
どんな女性なの? やっぱり、学生さん? お母さんは、知ってるの?」
と、矢継ぎ早に質問責めをしてきた。
彼はホッとしつつも、”異性として見てくれていないのか”と、一抹の寂しさも覚えた。
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