(五)
そんな陰口など、どこ吹く風とばかりに
「そらそら、お着きじゃ、お着きじゃて。
準備は出来とろうな?
村の衆には座ってもらおとるか?」
と、声を張り上げる。
「もう皆さんには、お座りいただいております。
ただ、村長さんがまだお見えじゃ……」
「村長は来ぬ、出張だと。
陳情に行って来るとかで、昨日出かけた。
ま、いい。おらぬ方が、色々との。」
頭を畳にこすり付けての初江の報告に、大婆は素っ気ない。
繁蔵の目が、初江に謝っている。
“もうちーと、待ってくれ。
なぁに、婆さまも年じゃ。
長くはないんじゃ。”
「さぁさぁ、皆の衆。
お待たせしましたの、ご到着じゃご到着じゃ。
さあさあ、祝うてくだされ。」
大婆の先導で、武蔵と小夜子が屏風の前に座った。
「ほおー!」
一斉に感嘆の声が洩れた。
「これは、これは……」
「正三坊ちゃんが惚れなさったのも、無理からんことじゃ。」
「ほんに、ほんに。畑が良いと、こうも違うもんか?」
「本日は、、、」
大婆に促されて、武蔵が立ち上がった。
“村長選に出る繁蔵のことを頼みますぞ。”
と、耳元で大婆が囁いた。
そんな陰口など、どこ吹く風とばかりに
「そらそら、お着きじゃ、お着きじゃて。
準備は出来とろうな?
村の衆には座ってもらおとるか?」
と、声を張り上げる。
「もう皆さんには、お座りいただいております。
ただ、村長さんがまだお見えじゃ……」
「村長は来ぬ、出張だと。
陳情に行って来るとかで、昨日出かけた。
ま、いい。おらぬ方が、色々との。」
頭を畳にこすり付けての初江の報告に、大婆は素っ気ない。
繁蔵の目が、初江に謝っている。
“もうちーと、待ってくれ。
なぁに、婆さまも年じゃ。
長くはないんじゃ。”
「さぁさぁ、皆の衆。
お待たせしましたの、ご到着じゃご到着じゃ。
さあさあ、祝うてくだされ。」
大婆の先導で、武蔵と小夜子が屏風の前に座った。
「ほおー!」
一斉に感嘆の声が洩れた。
「これは、これは……」
「正三坊ちゃんが惚れなさったのも、無理からんことじゃ。」
「ほんに、ほんに。畑が良いと、こうも違うもんか?」
「本日は、、、」
大婆に促されて、武蔵が立ち上がった。
“村長選に出る繁蔵のことを頼みますぞ。”
と、耳元で大婆が囁いた。
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