昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

大長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~ (六十三)の五

2013-06-08 16:39:50 | 時事問題
(五)

そんな陰口など、どこ吹く風とばかりに
「そらそら、お着きじゃ、お着きじゃて。

準備は出来とろうな? 
村の衆には座ってもらおとるか?」
と、声を張り上げる。

「もう皆さんには、お座りいただいております。
ただ、村長さんがまだお見えじゃ……」

「村長は来ぬ、出張だと。
陳情に行って来るとかで、昨日出かけた。
ま、いい。おらぬ方が、色々との。」

頭を畳にこすり付けての初江の報告に、大婆は素っ気ない。
繁蔵の目が、初江に謝っている。

“もうちーと、待ってくれ。
なぁに、婆さまも年じゃ。
長くはないんじゃ。”

「さぁさぁ、皆の衆。
お待たせしましたの、ご到着じゃご到着じゃ。
さあさあ、祝うてくだされ。」

大婆の先導で、武蔵と小夜子が屏風の前に座った。

「ほおー!」
一斉に感嘆の声が洩れた。

「これは、これは……」

「正三坊ちゃんが惚れなさったのも、無理からんことじゃ。」

「ほんに、ほんに。畑が良いと、こうも違うもんか?」

「本日は、、、」
大婆に促されて、武蔵が立ち上がった。

“村長選に出る繁蔵のことを頼みますぞ。”
と、耳元で大婆が囁いた。


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