(五)
「公私の私だよ、今は。
遊びに来たんだよ、分かっているのかな?
浮世の垢を落とすために来たんだよ。
ねぇ、佐伯君。
君は、分かってるよね?」
「課長、もう酔ってるのか? だとしたら、ほんとに安い酒だぜ。」
「料亭での課長とは大違いだ。」
「かみしもなんか着てたもんな、ちょこんと座って。」
「芸者相手じゃ、騒げなかったんだな。」
「今の課長、好きだぜ。
絶対に、こっちの課長がオーケーだ!」
女給たちの嬌声に送られて男たちが出てきた。
そしてボーイに促されて男たちが店内に入る。
中からブラスバンドの音が漏れてきた。
と、今の今まではしゃぎ回っていた正三が、突然黙りこくった。
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