昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~ (六十)の五

2013-04-30 18:27:17 | 小説


(五)

「公私の私だよ、今は。
遊びに来たんだよ、分かっているのかな? 

浮世の垢を落とすために来たんだよ。
ねぇ、佐伯君。
君は、分かってるよね?」

「課長、もう酔ってるのか? だとしたら、ほんとに安い酒だぜ。」

「料亭での課長とは大違いだ。」

「かみしもなんか着てたもんな、ちょこんと座って。」

「芸者相手じゃ、騒げなかったんだな。」

「今の課長、好きだぜ。
絶対に、こっちの課長がオーケーだ!」

女給たちの嬌声に送られて男たちが出てきた。
そしてボーイに促されて男たちが店内に入る。

中からブラスバンドの音が漏れてきた。
と、今の今まではしゃぎ回っていた正三が、突然黙りこくった。


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