昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~(八十五) 敵なんてそこら中に

2014-04-29 17:31:58 | 小説
(六)

「女だからなって。社長、まさか…」と、絶句する五平。

「その、まさかさ。まあ、スネに傷持つ身の俺だ。敵なんてそこら中に居るからな。
三、四人をパトロンにして、金を集めたらしい」

「ううーむ。そこまでしますか、女の身で」

「まあ、商売をしたかったんだろうよ。で、資金集めの口実に、俺を使ったんだろう。
で、あわよくば富士商会も同じ目に合わせてやろうってことだろうよ」

「しかし社長、いつ調べたんですか?」

「調べたわけじゃないさ。情報が転がり込んできたんだのさ。
山田の親父の所に寄った時に、聞かされたのさ。得意満面といった顔付きだったよ。
何せ、俺の知らない情報だったからな」

「山田商店さんですか。あそこは、創業以来の取引ですね」

服部が懐かしそうに言う。即座に、山田が言う。

「立て看板を持ってた時に、いの一番に声をかけてくれたんだぜ。
『兄ちゃん。なにを売ってくれるんだ?』って、な」


最新の画像もっと見る

コメントを投稿