(十一)
「はい、お客さーん。
この綱から入らないようにね。生きたへびでございます。
どんな悪さをせぬとも限りません。
どうぞ、この綱からお入りになりませんよう。
さあ、いよいよ可哀相なへび女の登場です。
拍手はいりませんよ、人間に慣れておりません。
何せ人里離れた、深ーい山中で育った可哀相な娘でございます。
ほんとにねえ、可哀相な娘でございます。」
何度も何度も可哀相だと繰り返し、大きく手を広げて綱から入らせぬようにしていた。
「さあて、それではご登場願いましょう。
どうぞ、くれぐれも拍手は無しで声もお出しにならぬよう、お願いいたしまーす。
さあ、はいはい、お待ちどおさま。
へび女でございます。
首に巻いたへびが、嫌がっております。
食べられることを知っておりますへびが、暴れております。」
口の周りを真っ赤にした女が現れた折には、悲鳴にも似た声が、そこかしこから起こった。
私と友人もまた、思わず身構えてしまった。
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