(四)
憤慨している武蔵に、
「タケゾーだって、そうじゃないの」と、小夜子が笑った。
「小夜子は特別だ。
小夜子は、お姫さまだからな。
会社の連中、皆が口を揃えて言ってるぞ。
『お姫さまは、お元気ですか?』とか、
『またお出でくださるよう、お願いしてくださいよ』なんて。
毎日だ、いい加減、耳にタコができてしまった。
ほら、ほら、どうだ。耳の穴を覗いてみてくれ。
できてるだろ? 大きいのが。見えないか、見えないか?」
と、耳を突き出す。
「やめてよ、もう。
分かったわよ、夜にでも耳掃除してあげるから。
あの振袖を着るのなら、小物入れの筥迫を新調しなくちゃ。
今のじゃ、地味すぎるわ。
それに、巾着も新調しようっと。えぇっと、それから……」
「分かった、分かった。
それじや、百貨店の高井を明日にでも呼んでやるよ。
適当に見つくろって持って来させるから。
その中から、好きなのを選ぶといい」
憤慨している武蔵に、
「タケゾーだって、そうじゃないの」と、小夜子が笑った。
「小夜子は特別だ。
小夜子は、お姫さまだからな。
会社の連中、皆が口を揃えて言ってるぞ。
『お姫さまは、お元気ですか?』とか、
『またお出でくださるよう、お願いしてくださいよ』なんて。
毎日だ、いい加減、耳にタコができてしまった。
ほら、ほら、どうだ。耳の穴を覗いてみてくれ。
できてるだろ? 大きいのが。見えないか、見えないか?」
と、耳を突き出す。
「やめてよ、もう。
分かったわよ、夜にでも耳掃除してあげるから。
あの振袖を着るのなら、小物入れの筥迫を新調しなくちゃ。
今のじゃ、地味すぎるわ。
それに、巾着も新調しようっと。えぇっと、それから……」
「分かった、分かった。
それじや、百貨店の高井を明日にでも呼んでやるよ。
適当に見つくろって持って来させるから。
その中から、好きなのを選ぶといい」
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