「じゃあさ、大学で流行っているんだけど“じゃんけんゲーム”でもやるかい?」
彼は、思わず井上課長に教えられたゲームを口にした。
「ナイトクラブで遊んだゲームなんだ」
とは言えず、学生の間で人気のゲームと言ってしまった。
そしてそのゲームの内容を説明し終わると、酔いつぶれて横になっていた田口が、ムクリと起きあがった。
「まりほぉ、キスしてふれえ!」
「やだあ、もう。寝てなさい、この酔っぱらい!」
と、真理子は田口をこずいた。
そのまま倒れ込んだ田口は、起きあがることもなく眠りに入ってしまった。
「やれやれ、田口は酔いつぶれたな。佐知子、毛布でも掛けてやってくれよ」
高木の言葉に、佐知子は「はい、はい」と、嫌がる風もなく奥の寝室から毛布を取りだしてきた。
「いゃあ、奥様だな、佐知子さん」
彼のそんな言葉に、
「いやねえ、もう」
と、満更でもない表情で田口に毛布を掛けてやった。
暫くの間ゲームで大騒ぎをしたが、時計が十二時を打ったところでお開きとなった。
「ありがとう、楽しかったわ」
「遅くまで、ごめんよ」
皆口々に高木に礼を言うと、離れを後にした。
「ミタライ君、送ってあげる。車で来てるから、私。
照子は、広尾君と帰るでしょ? それから、お願いね」
真理子は、照子に目配せをしながら彼の腕に自分の腕を滑り込ませた。
「わかった、大丈夫よ。広尾君、帰ろう」と、照子は真理子に頷いた。
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