「鈴木さん。坂本さんを連れてきてくれる。お願いね」
ほのかにとって一番の苦手なのだが、主任の指示では従わざるをえない。
「坂本さん、坂本さん」
声をかけても、坂本は素知らぬ顔をしている。
ベッドから抱きかかえて、車いすに何とか乗せた。
いつもは抱きついてくる坂本が、両手をだらりと車いすの横に出して膝の上に乗せようとしないでいた。
「坂本さん。手をね、膝の上に乗せてくださいね」
体をかがめて、坂本の耳元で声をかけた。
「ちょっと。あんた、なにしてるの! あたしが押すわよ!」
どぎつい赤の口紅を塗った老婆が、荒げた声をかけてきた。
「田上のお婆ちゃん。あたしがやりますから」
「誰が、お婆ちゃんよ! 失礼だわよ、あんた」
今にもほのかを突き飛ばそうとしたとき、
「田上さん。ここに居たの? 探したわよ。電話が入ってるの、娘さんからよ」
急を要するらしいわよと、呼びに来た。
「さ、それじゃ行きましょうか。手を、膝に乗せてくださいね」
坂本の手が動き、ほのかの太ももに触れた。
「そうじゃなくてね、膝の上に乗せて下さいね」
他の職員たちのたしなめには素直に応じる坂本だが、素知らぬ顔でまさぐり続ける。
聞こえなかったのかと体をかがめると、今度は胸をまさぐり始めた。
「だめ!」
小声ながらも力強く言うと、すぐに手を払った。
「しょんべん!」
眉間にしわを寄せて、不機嫌な声を出した。
ほのかにとって一番の苦手なのだが、主任の指示では従わざるをえない。
「坂本さん、坂本さん」
声をかけても、坂本は素知らぬ顔をしている。
ベッドから抱きかかえて、車いすに何とか乗せた。
いつもは抱きついてくる坂本が、両手をだらりと車いすの横に出して膝の上に乗せようとしないでいた。
「坂本さん。手をね、膝の上に乗せてくださいね」
体をかがめて、坂本の耳元で声をかけた。
「ちょっと。あんた、なにしてるの! あたしが押すわよ!」
どぎつい赤の口紅を塗った老婆が、荒げた声をかけてきた。
「田上のお婆ちゃん。あたしがやりますから」
「誰が、お婆ちゃんよ! 失礼だわよ、あんた」
今にもほのかを突き飛ばそうとしたとき、
「田上さん。ここに居たの? 探したわよ。電話が入ってるの、娘さんからよ」
急を要するらしいわよと、呼びに来た。
「さ、それじゃ行きましょうか。手を、膝に乗せてくださいね」
坂本の手が動き、ほのかの太ももに触れた。
「そうじゃなくてね、膝の上に乗せて下さいね」
他の職員たちのたしなめには素直に応じる坂本だが、素知らぬ顔でまさぐり続ける。
聞こえなかったのかと体をかがめると、今度は胸をまさぐり始めた。
「だめ!」
小声ながらも力強く言うと、すぐに手を払った。
「しょんべん!」
眉間にしわを寄せて、不機嫌な声を出した。
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