翌朝、どことて行く当てのない男は、ホテルの傍の喫茶店に入った。
殆ど満席の状態で、男はやむなくカウンターに座った。
不味いコーヒーだった。出がらしじゃないのか、思わず口にでかかった。
ミドリの入れるコーヒーは、高い物ではなかったけれども、うまいコーヒーだった。
「お客さん、ご旅行ですか?」と、マスターが声をかけてくる。
「うん、まあね。だけど、わかるの?」
「そりゃあ、わかりますよ。
お客さんみたいに、のんびりとコーヒーを飲まれる方は。
待ち合わせの方は、時間やら入り口を気にされますしね。
出勤途中の方も、落ち着きませんね。
私も、ここに店を開いて二十年余になりますがね。
色んな人を見てきましたからねえ」
「だろうね」
馬鹿なことを聞いたと後悔した。
ジャンパー姿に、旅行用の小さな鞄を携行しているのだ。
旅行客だと言うことは誰にだって分かるはずだ。
男は、自慢げに話をするマスターに対し、次第に煩わしさを感じ始めた。
人の好さそうな中年男だが、今の男には苛立つだけだった。
「トースト」
話の腰を折るように、強い口調で言った。
マスターは、男の心がわかったのかプッツリと話を止めた。
そして、「サービスですよ」とバナナ一本を添えてくれた。
しかしそんな好意にさえ、乞食じゃないぞ! と怒鳴りたくなる心持ちだった。
「いらっしゃい!」
マスターの声につられるように、入り口を見た。
そこには、昨夜の娘が居た。
少しはにかみつつも、睨みつけるような目の娘だった。
殆ど満席の状態で、男はやむなくカウンターに座った。
不味いコーヒーだった。出がらしじゃないのか、思わず口にでかかった。
ミドリの入れるコーヒーは、高い物ではなかったけれども、うまいコーヒーだった。
「お客さん、ご旅行ですか?」と、マスターが声をかけてくる。
「うん、まあね。だけど、わかるの?」
「そりゃあ、わかりますよ。
お客さんみたいに、のんびりとコーヒーを飲まれる方は。
待ち合わせの方は、時間やら入り口を気にされますしね。
出勤途中の方も、落ち着きませんね。
私も、ここに店を開いて二十年余になりますがね。
色んな人を見てきましたからねえ」
「だろうね」
馬鹿なことを聞いたと後悔した。
ジャンパー姿に、旅行用の小さな鞄を携行しているのだ。
旅行客だと言うことは誰にだって分かるはずだ。
男は、自慢げに話をするマスターに対し、次第に煩わしさを感じ始めた。
人の好さそうな中年男だが、今の男には苛立つだけだった。
「トースト」
話の腰を折るように、強い口調で言った。
マスターは、男の心がわかったのかプッツリと話を止めた。
そして、「サービスですよ」とバナナ一本を添えてくれた。
しかしそんな好意にさえ、乞食じゃないぞ! と怒鳴りたくなる心持ちだった。
「いらっしゃい!」
マスターの声につられるように、入り口を見た。
そこには、昨夜の娘が居た。
少しはにかみつつも、睨みつけるような目の娘だった。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます