昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~ (六十)の一

2013-04-26 20:57:38 | 小説
(一)

杉田の先導で、きらびやかなネオンサインの下を初めて練り歩く正三。

キョロキョロと辺りを見回す正三に、
「坊ちゃん、まるでお上りさんですよ。

恥ずかしいからやめてくださいよ。」
と、上本が正三の袖を引っ張った。

「だって、初めていや二度目なんだぜ。
ここが夜の銀座という所かい? いゃあ、凄いねえ。

まったく別天地だ。
日本復興の凄まじさを、確かに感じるね。」

上本の言などまるで意に介せずに、立ち止まってぐるりと見渡したりしている。

「坊ちゃん、坊ちゃん。
ほら、あそこで婦女子が笑っていますよ。

あれれ、手なんか振り出した。
ひょっとして知り合いですか?」

小山の指差す先を見ると、確かに手を振る女性がいる。


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