昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~ (五十九)の十

2013-04-25 21:17:51 | 小説

(十)

ホテルのロビーでの一件は、少なからず正三のプライドを傷付けた。

“確かに連絡をしなかったのは僕の落ち度だけれども、
あんな公衆の面前であれほどに罵倒されるとは。

一介の学生だった昔ならいざ知らず、今は郵政省に勤める身だ。
民を指導する立場にある僕だ。

幸い僕を知る者が居なかったから良かったものの、大恥を掻いてしまった。”

腹立たしさを抑えきれない正三だ。
未だにあの醜態が忘れられないでいた。

自席に戻りはしたものの、書類の文字が躍っている。
引出しのタバコで一服し、ようやく落ち着きを取り戻した。


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