昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

鼠小僧次郎吉 ~さると猿回し~ 二十五

2010-09-06 22:46:28 | 小説
その翌朝、
次郎吉は何くわぬ顔で中間に会いに行った。

そして、
大騒ぎをしている光景を
冷ややかな目つきでながめた。

中間は、
“それどころじゃねえよ。”と、
次郎吉を疑うこともなく、
追い返した。

一般的に、
盗みは夜の侵入ではあるが、
次郎吉は、
昼の内に潜り込むこともあった。

中間の居る江戸部屋もしくは総部屋に通ると偽り、
その足で厠に入り、
夜を待つのである。

そして家人が寝静まった頃に、
ゆうゆう奥向に盗みに入る。

他の盗人は、
武家屋敷に代々伝わる骨董品等を盗むこともあるが、
次郎吉は金子だけにしていた。

そして、
できるだけ三両・五両の少額にしていた。

着物・道具類は大枚の金になることもあるが、
売り捌いた折りにそこから足がつくこともある。

次郎吉に、
盗みにかけてそれ程の才能があったわけではない。

唯、
建具職・鳶職の手伝いが、
今になって幸いしているのである。

それに付け加え、
稲葉小僧なる盗賊を調べたにすぎない。

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