随分と昔のことじゃが、都会から流れてきた女がおった。
その日の食い扶持にも困っておったので、可哀相に思った儂は、色々と便宜を図ってやったわ。
それが、恩を仇で返しおって。
見返りなんぞ求めておらなんだ儂じゃが、それでは心苦しいからと女が言うもんじゃから。
つい…。
ところがじゃ、他の男共とも。いや、村の男全てじゃった。
挙げ句には、庄屋様ん所の跡取り息子をたぶらかしおって。
都会に連れ出されて慣れぬ商売に手を出して、とうとう身上を潰されなすった。
全く、とんでもない性悪女じゃった。
もうお前も、一端の大人じゃ。
女に興味を持つのも、仕方のないことじゃ。
人間二十歳を越えれば、女が欲しくなるじゃろう。
儂は、それを咎めているわけじゃない。
そんな時は、商売女にしておけ。
変な女に引っかかるでないぞ。
帰って来い、武士。
儂も、老齢じゃ。
もう、長くはない。
儂を、安心させてくれ。
のお、武士。
弱々しい声で終わった。
その夢から目覚めた彼は胸騒ぎを覚えて、未だ薄暗い中を外に飛び出した。
降り積もった雪は、凍結状態になっていた。
気は焦るものの、一歩々々踏みしめながら歩いた。
ものの五分とかからずに着ける電話ボックスに、二十分近くかかってしまった。
「もしもし、、」
「武士です。変わったことは、ありませんか? お爺さまは、どうしてます?」
母親の声を遮るように、矢継ぎ早に問い掛けた。
「まあまあ、どうしたの。電話をかけてくるなんて、初めてじゃないの?
お爺さまなら、相変わらずですよ。
それより、そちらの方は雪だと言うけれど、大丈夫なの?
風邪を惹かないよう、気をつけなさい」
「そうですか、変わりないですか。それなら良いんです。
ちょっと、夢見が悪かったので」
「タケくん? 夢見が悪、、」
母親の話の途中で、小銭が切れてしまった。
母親に申し訳ないとは思ったが、彼の不安は杞憂に終わったことで安心を得た。
その日の食い扶持にも困っておったので、可哀相に思った儂は、色々と便宜を図ってやったわ。
それが、恩を仇で返しおって。
見返りなんぞ求めておらなんだ儂じゃが、それでは心苦しいからと女が言うもんじゃから。
つい…。
ところがじゃ、他の男共とも。いや、村の男全てじゃった。
挙げ句には、庄屋様ん所の跡取り息子をたぶらかしおって。
都会に連れ出されて慣れぬ商売に手を出して、とうとう身上を潰されなすった。
全く、とんでもない性悪女じゃった。
もうお前も、一端の大人じゃ。
女に興味を持つのも、仕方のないことじゃ。
人間二十歳を越えれば、女が欲しくなるじゃろう。
儂は、それを咎めているわけじゃない。
そんな時は、商売女にしておけ。
変な女に引っかかるでないぞ。
帰って来い、武士。
儂も、老齢じゃ。
もう、長くはない。
儂を、安心させてくれ。
のお、武士。
弱々しい声で終わった。
その夢から目覚めた彼は胸騒ぎを覚えて、未だ薄暗い中を外に飛び出した。
降り積もった雪は、凍結状態になっていた。
気は焦るものの、一歩々々踏みしめながら歩いた。
ものの五分とかからずに着ける電話ボックスに、二十分近くかかってしまった。
「もしもし、、」
「武士です。変わったことは、ありませんか? お爺さまは、どうしてます?」
母親の声を遮るように、矢継ぎ早に問い掛けた。
「まあまあ、どうしたの。電話をかけてくるなんて、初めてじゃないの?
お爺さまなら、相変わらずですよ。
それより、そちらの方は雪だと言うけれど、大丈夫なの?
風邪を惹かないよう、気をつけなさい」
「そうですか、変わりないですか。それなら良いんです。
ちょっと、夢見が悪かったので」
「タケくん? 夢見が悪、、」
母親の話の途中で、小銭が切れてしまった。
母親に申し訳ないとは思ったが、彼の不安は杞憂に終わったことで安心を得た。
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