昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~ふたまわり・第一部~(八)の二

2011-05-24 20:34:29 | 小説
「さあさあ、
できたぞ。」
ほかほかと湯気の立つ汁に、
菜っ葉の味噌和えを添えてあった。
「さぁ、お食べ。
お代わりしていいぞ、
たんとあるからの。」
「おいしい!
お父さんのお汁は、
いっつもおいしい。
澄江には、
出せない味だね。
「うんうん。
汁だけは、
わしの自慢じゃでの。」
口いっぱいに頬張りながら食べる澄江を、
目を細め愛しげに見つめる茂作だった。
「あぁ、おいしかった。
生き返ったわ。
ありがとう、
お父さん。」

「うんうん。
もういいのか?
まだ、
たんと残ってるぞ。」
「うぅん、
もうお腹いっぱいよ。」
膨れたお腹をさすりながら、
破顔一笑の澄江だった。
茂作はといえば、
そんな澄江を見つめながら涙涙、
だった。

「心配かけてごめんね、
ごめんね。」
澄江も大粒の涙をこぼしながら、
何度も何度も繰り返した。
「いいんじゃ、
いいんじゃ、
もういいさ。
のぉ、
もう泣くのは終わりじゃ。」
「うん、うん。
もう泣かない。」


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