昭和の恋物語り

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長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第一部~(十四) どんなことなの

2015-06-29 08:49:43 | 小説
「で? どんなことなの、相談って」
「はい。実は、友人のことなんです」

さすがに、彼自身の悩みだとは言えない彼だった。
「境遇が同じだということもあって、僕に悩みを打ち明けてきたんですが。
僕が母子家庭だということは、ご存じですよね?」

小原の視線から逃げるようにグラスに目を落としながら、彼は話を続けた。
小原は、うん、うんと頷きながら、ストレートのブランデーを口に運んだ。

「友人の母親に、男性が居るらしいんです。
相手の男性がどんな人なのかは、友人は知らないらしいんですが。
幼なじみから知らされたんです。
友人はすごく怒りまして、『許せない!』って、言うんです。
友人の気持ちも分かるんですが、お母さんの気持ちも分かるんです」

そこまで話した彼は喉に乾きを覚え、グラスのブランデーを一気に流し込んだ。
「あっ!そんな一気に飲んだら‥‥」
激しくむせぶ彼に、涼子は慌てて彼の背をさすった。
「大丈夫? はいっ、水を飲んで。ブランデーは、少しずつ飲まなきゃだめよ」

もう大丈夫ですという彼で、小原の答えを求めた。
「そうねえ。私は未婚だし、まして子供が居ないから。
的確な答えになるかどうかは、分からないけど。
やっぱり、男の人に頼りたくなる時もあるでしょうねえ。
で、いつからなの? 男性とのお付き合いは。最近なの? それとも、前から?」

「はあ。多分、最近だと思いますが。いや、最近だと言っていました。
高校時代まで一緒に暮らしていましたが、そんな雰囲気はなかったですし。
いや、なかったと言ってましたかしら」

しどろもどろに、彼は答えた。友人の話だというのに、断定調はおかしいと何度も言い直した。
小原は、彼自身の悩みだと気が付いたが、気付かぬふりをして話を聞き続けた。


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