(四)
「なんて女だ。自慢をするなんて、聞いたことがない」
「まったくです、まったくです。男も男です。女の言いなりになっております」
聞こえよがしに囁きあう、男二人。
連れ合いらしき女がわき腹を突付いてる。
「やめなさいって、お父さん。
ほら、刺青じゃないの? 二の腕のところに。なんとか命って…」
汗で浮き出ている朱色の文字が、麦藁帽子とサングラスとに相まって、暴力団の風体を醸し出していた。
「ハハハ、これですか?」
サングラスを外しシャツを捲り上げて
「妻の名前です。流行っているんです、愛の証しというわけですよ。
どうです、旦那さんも。」
と、武蔵が声をかけた。
小夜子に恥をかかせたくないという思いと、屈託のない娘に警戒心を抱かせたくないと考えた武蔵だった。
「あ、そりゃどうも。お前、少しだまってろ」
明らかに父親は、警戒している。
老人もまた、武蔵から目をそらしている。
「そうよ、そうよ。素敵じゃない、愛の証しだなんて。
なにも分からないのに、そういうこと言っちゃいけないわよ」
娘はもう、小夜子と武蔵のフアンになってしまったようで、何やかやと小夜子と話し込んでいる。
「なんて女だ。自慢をするなんて、聞いたことがない」
「まったくです、まったくです。男も男です。女の言いなりになっております」
聞こえよがしに囁きあう、男二人。
連れ合いらしき女がわき腹を突付いてる。
「やめなさいって、お父さん。
ほら、刺青じゃないの? 二の腕のところに。なんとか命って…」
汗で浮き出ている朱色の文字が、麦藁帽子とサングラスとに相まって、暴力団の風体を醸し出していた。
「ハハハ、これですか?」
サングラスを外しシャツを捲り上げて
「妻の名前です。流行っているんです、愛の証しというわけですよ。
どうです、旦那さんも。」
と、武蔵が声をかけた。
小夜子に恥をかかせたくないという思いと、屈託のない娘に警戒心を抱かせたくないと考えた武蔵だった。
「あ、そりゃどうも。お前、少しだまってろ」
明らかに父親は、警戒している。
老人もまた、武蔵から目をそらしている。
「そうよ、そうよ。素敵じゃない、愛の証しだなんて。
なにも分からないのに、そういうこと言っちゃいけないわよ」
娘はもう、小夜子と武蔵のフアンになってしまったようで、何やかやと小夜子と話し込んでいる。
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