(七)
「違うの、違うのよ。そう、人いきれしちゃったの。
そうなの、どっと人が出たでしょ? だからなの」
「あぁ、そうですか。なら、宜しいのですけど。
どうしましょうか、やはりご自宅に直行されますか」
「大丈夫よ、風に当たれば。そう、少し風に当たれば落ち着くわ。
会社に行ってちょうだい」
無言のまま、窓からの流れ込む風に当たる小夜子。
次第に気持ちのざわめきが落ち着いていくのを感じた。
“あとで体調を崩されたらどうしょう。
やっぱり、ご自宅にこのままお帰りいただこうか。
みんな待ってるだろうけど、仕方ないよな。お体第一なんだから”
「あのぉ、やっぱり、ご自宅へ…」
恐る恐るバックミラーを覗き込んだ。
「良いって、言ってるでしょ!
それより、しっかりと前を見て運転しなさい!」
ぴしゃりと、強い口調の小夜子。
なぜかしら、へりくだった口調の竹田にいらつく小夜子だった。
「竹田のお姉さんって、いくつだったかしら?」
「はい、姉は二十五です。ぼくが今年、三になります。
ですので、小夜子奥さまより一つ上です」
余計なことを言ってしまったと悔やむ竹田だったが、案に相違して小夜子からは
「そう」と、ひと言が出ただけだった。
まるで竹田の返事を聞いていないようだった。
「違うの、違うのよ。そう、人いきれしちゃったの。
そうなの、どっと人が出たでしょ? だからなの」
「あぁ、そうですか。なら、宜しいのですけど。
どうしましょうか、やはりご自宅に直行されますか」
「大丈夫よ、風に当たれば。そう、少し風に当たれば落ち着くわ。
会社に行ってちょうだい」
無言のまま、窓からの流れ込む風に当たる小夜子。
次第に気持ちのざわめきが落ち着いていくのを感じた。
“あとで体調を崩されたらどうしょう。
やっぱり、ご自宅にこのままお帰りいただこうか。
みんな待ってるだろうけど、仕方ないよな。お体第一なんだから”
「あのぉ、やっぱり、ご自宅へ…」
恐る恐るバックミラーを覗き込んだ。
「良いって、言ってるでしょ!
それより、しっかりと前を見て運転しなさい!」
ぴしゃりと、強い口調の小夜子。
なぜかしら、へりくだった口調の竹田にいらつく小夜子だった。
「竹田のお姉さんって、いくつだったかしら?」
「はい、姉は二十五です。ぼくが今年、三になります。
ですので、小夜子奥さまより一つ上です」
余計なことを言ってしまったと悔やむ竹田だったが、案に相違して小夜子からは
「そう」と、ひと言が出ただけだった。
まるで竹田の返事を聞いていないようだった。
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