(四)
「そうなの? 梅子姉さんでも神さまにお願いしたりするの?
小夜子ね、最近おかしい時があるの。
さっきもね、この竹田と一緒にステーキを食べようとしたんだけど、どうしても食べられなくて」
「小夜子がお肉を食べられないとは、そりゃ確かに変だ。どんな風だったんだい?」
小夜子の手を両手で包んでみると、少しの熱を感じる梅子だった。
「それがね、おかしいの。ちっとも美味しく感じないの。
それどころか胸がムカムカしてね、見るのも嫌になるの。
おかしいでしょ、あたし。こんなこと、初めてだもの」
突然に、ケタケタと笑い出す小夜子。
ついさっきまでの涙が、まるで嘘のようだ。
「名前、なんて言うんだい? この青年は。
うーん、真面目だね。初めてだろ? こんな店は。
いや店どころか、女遊びの経験もないね? きっと。
そんなに小さくなることはないさ。
そんな端っこに座らずに、ほらっ、でんと真ん中に座りな。
あんたはお客さまだ。大きな顔をしてりゃいいのさ。
あ、分かったぞ。あんたは、竹田くんだろ?
そうだよ、間違いない。社長がいつも言ってるよ。
石部金吉みたいな青年が居るってね。
将来が楽しみだとも。良い参謀になるだろうってね」
「そ、そんな大それた者じゃありません。
それにぼく、一度お邪魔してますよ。専務に連れてきてもらいましたから。」
更に体を縮こませている。テーブルの水を一気に飲み干して、喉の渇きを癒した。
「そうなの? 梅子姉さんでも神さまにお願いしたりするの?
小夜子ね、最近おかしい時があるの。
さっきもね、この竹田と一緒にステーキを食べようとしたんだけど、どうしても食べられなくて」
「小夜子がお肉を食べられないとは、そりゃ確かに変だ。どんな風だったんだい?」
小夜子の手を両手で包んでみると、少しの熱を感じる梅子だった。
「それがね、おかしいの。ちっとも美味しく感じないの。
それどころか胸がムカムカしてね、見るのも嫌になるの。
おかしいでしょ、あたし。こんなこと、初めてだもの」
突然に、ケタケタと笑い出す小夜子。
ついさっきまでの涙が、まるで嘘のようだ。
「名前、なんて言うんだい? この青年は。
うーん、真面目だね。初めてだろ? こんな店は。
いや店どころか、女遊びの経験もないね? きっと。
そんなに小さくなることはないさ。
そんな端っこに座らずに、ほらっ、でんと真ん中に座りな。
あんたはお客さまだ。大きな顔をしてりゃいいのさ。
あ、分かったぞ。あんたは、竹田くんだろ?
そうだよ、間違いない。社長がいつも言ってるよ。
石部金吉みたいな青年が居るってね。
将来が楽しみだとも。良い参謀になるだろうってね」
「そ、そんな大それた者じゃありません。
それにぼく、一度お邪魔してますよ。専務に連れてきてもらいましたから。」
更に体を縮こませている。テーブルの水を一気に飲み干して、喉の渇きを癒した。
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