昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~ (六十)の八

2013-05-04 19:56:11 | 小説


(八)

料亭と言う言葉に、薫と呼ばれた女給のこめかみがぴくりと動いた。

「お兄さん、何を怒ってるの? 
この薫さんにおっしゃいな。
たちどころに解決うぅ!よ。」

「場所だよ。
何が悲しくて、こんな所で飲まなくちゃいかんのだ。

我々は、日本国家を支える官僚だ。
さらには、この方は、未来の事務次官さまだ。

官僚の頂点に立たれるお方だぞ。」

「そうだ! 
そのお方が、いつもの料亭をやめて、庶民の娯楽場なるキャバレーに来られたのだ。
それをだ、このような便所……」

「けしからん! 
いくら課長の店といえども、けしからん!」
と、山田を制して坂井が吠えた。

そして次には上本が、小山が、津田が吼えた。

「薫ちゃん、何とかならないだろうか? 
この佐伯君はあたしなんかとは違い、由緒正しき方なんだ。

店にとって、決して損にはならないお方だ。
何せ、毎夜の如くに接待攻勢を受けているんだから。」


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