一
「それはそうと、社長。オンリーを探さなくちゃいかんのですわ。
最近、アメさんの要求が厳しくなりまして。
まぁ英会話のできる女は増えてはきたんですが、
中々におメガネに叶うような女が見つからんのですわ。」
嘆息交じりに、五平が窮状を訴えた。
「五平の言葉とは、思えんな。
そんなに、難しくなってきたのか?
と言うより、探すポイントを間違えてるんじゃないのか。
英会話ばかりに、こだわってないだろうな。
言葉なんて、その気になれば何とかなるもんだろうが。」
「まぁ、そりゃそうなんですが・・。
どうもね、最近の女ときたら・・。
私が声をかけると、胡散臭い顔をするんですわ。
社長、ひとつご足労願えませんか。」
「分かった、分かった。
そうか、敬遠されるか。
そうだな、久しぶりに銀座の空気でも吸うかな?」
夕闇の訪れた銀座は、きらびやかなネオンに彩られていた。
復興のスピードは目を見張るものがあり、日本人の底力をまざまざと見せ付けている。
朝鮮特需という神風が吹いたせいもあろうが、やはりのことに日本人特有の勤勉さが際立つ。
「社長、見つけました。
あそこの店で、洋服を見てる女が居るでしょう。
ちょっと、声をかけてきます。
私が社長の方を見たら、その帽子をちょっと上げてみてください。」
五平に“是非に!”と言われ、ダブルのスーツを着込みソフト帽を被ってきた武蔵だった。
普段ならば開襟シャツに麻の背広姿なのだが、今夜ばかりはそうもいかない。
小なりと言えども、一国一城の主としての威厳を醸し出さねばならない。
二
五平が目を付けた女性は、当世としてはやゃ大柄だ。
後ろ姿での判断では、肉付きは良さそうだ。
武蔵には太めと感じるが、アメリカ将校はそれが良いらしい。
所在なく立ち竦んでいた武蔵に、五平が手を上げてきた。
武蔵は言われたとおりに、帽子を少し上げた。
すると、五平が手招きする。
“なんだ、俺が行くのか・・”
少し不満に思えたが、これも仕事の内だと、ゆっくり歩いた。
「社長!永山三保子さんです。」
「永山です。」
少し甲高い声だが、多分緊張のせいだろう。
武蔵は、威厳を保ちながら軽く会釈をした。
心なしか、三保子の顔が赤らんでいる。
どう話を持ちかけたのか判然としない武蔵は、チラリと五平を見た。
「どうです、社長。
この方なら、メガネに叶うと思うんですが。
食事でもしながら、詳しい話をしましょう。」
誰のメガネに叶うのか、武蔵には分からない。
しかし、若い女性と食事を共にするのは、武蔵ならずとも嬉しいものだ。
「申し訳ありません。
私、夕食は済ませています。
いえ、お付き合いしないと言う訳ではないんです。」
「そうですか。
それじゃ、銀座に行きましょう。
実のところ、その途中なんです。
お酒なんか、どうです?
見たところ、いける口だと思いますが。
若い女性とお酒を飲めるなんて、滅多にないことですから。
社長!社長からも、お願いしてくださいよ。」
脈ありと見ている五平は、有無を言わさずといった風情だった。
「それはそうと、社長。オンリーを探さなくちゃいかんのですわ。
最近、アメさんの要求が厳しくなりまして。
まぁ英会話のできる女は増えてはきたんですが、
中々におメガネに叶うような女が見つからんのですわ。」
嘆息交じりに、五平が窮状を訴えた。
「五平の言葉とは、思えんな。
そんなに、難しくなってきたのか?
と言うより、探すポイントを間違えてるんじゃないのか。
英会話ばかりに、こだわってないだろうな。
言葉なんて、その気になれば何とかなるもんだろうが。」
「まぁ、そりゃそうなんですが・・。
どうもね、最近の女ときたら・・。
私が声をかけると、胡散臭い顔をするんですわ。
社長、ひとつご足労願えませんか。」
「分かった、分かった。
そうか、敬遠されるか。
そうだな、久しぶりに銀座の空気でも吸うかな?」
夕闇の訪れた銀座は、きらびやかなネオンに彩られていた。
復興のスピードは目を見張るものがあり、日本人の底力をまざまざと見せ付けている。
朝鮮特需という神風が吹いたせいもあろうが、やはりのことに日本人特有の勤勉さが際立つ。
「社長、見つけました。
あそこの店で、洋服を見てる女が居るでしょう。
ちょっと、声をかけてきます。
私が社長の方を見たら、その帽子をちょっと上げてみてください。」
五平に“是非に!”と言われ、ダブルのスーツを着込みソフト帽を被ってきた武蔵だった。
普段ならば開襟シャツに麻の背広姿なのだが、今夜ばかりはそうもいかない。
小なりと言えども、一国一城の主としての威厳を醸し出さねばならない。
二
五平が目を付けた女性は、当世としてはやゃ大柄だ。
後ろ姿での判断では、肉付きは良さそうだ。
武蔵には太めと感じるが、アメリカ将校はそれが良いらしい。
所在なく立ち竦んでいた武蔵に、五平が手を上げてきた。
武蔵は言われたとおりに、帽子を少し上げた。
すると、五平が手招きする。
“なんだ、俺が行くのか・・”
少し不満に思えたが、これも仕事の内だと、ゆっくり歩いた。
「社長!永山三保子さんです。」
「永山です。」
少し甲高い声だが、多分緊張のせいだろう。
武蔵は、威厳を保ちながら軽く会釈をした。
心なしか、三保子の顔が赤らんでいる。
どう話を持ちかけたのか判然としない武蔵は、チラリと五平を見た。
「どうです、社長。
この方なら、メガネに叶うと思うんですが。
食事でもしながら、詳しい話をしましょう。」
誰のメガネに叶うのか、武蔵には分からない。
しかし、若い女性と食事を共にするのは、武蔵ならずとも嬉しいものだ。
「申し訳ありません。
私、夕食は済ませています。
いえ、お付き合いしないと言う訳ではないんです。」
「そうですか。
それじゃ、銀座に行きましょう。
実のところ、その途中なんです。
お酒なんか、どうです?
見たところ、いける口だと思いますが。
若い女性とお酒を飲めるなんて、滅多にないことですから。
社長!社長からも、お願いしてくださいよ。」
脈ありと見ている五平は、有無を言わさずといった風情だった。
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