昭和の恋物語り

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長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(九十三) 浮気の仕方なんて、教えないでよね! 

2014-07-20 10:35:19 | 小説
(二)

「あらあら、鼻息の荒いこと。でも教えるのは、商売のことだけにしてよ。
浮気の仕方なんて、金輪際教えないでよね。
とすると、女の子がいいわね。そうよ、新しい女よ。
女性経営者なんて、ちょっとしたものよね」

小夜子が、小鼻を膨らませて得意げに語る。
浮き浮きとした表情が、武蔵を嬉しくさせる。

“この女と子どものためなら、俺は何でもしてやる。
不幸にする奴が居たら、絶対に許さん。
地の果てまで追いかけてでも殺してやる”

「分かった、分かった。分かったから、心静かにしていてくれ。
そうだ、欲しいものはないか? レコードはどうだ? 
聞いた話だと、クラシック音楽が良いらしい。広い心を持った子どもになるんだぞうだ。
よしよし、何枚か買ってきてやろう。
なあに、レコード店の主人に選ばせるさ。胎教に良いクラシック音楽をな。
それから…と。食べたい物はないか? 病人じゃないんだ。
何でも食べて良いんだろ? 今度の休みは駄目だが、来週に行こう。ビフテキか? 寿司か?」

日がな一日何をするでもなく過ごす小夜子だった。
ゆったりとソファに腰を下ろしての、レコード鑑賞の毎日だった。

ビッグバンドの奏でるレコードをと考える小夜子だったが
「だめだ、だめだ。赤子がビックリしてしまうぞ。クラシックだ、静かな曲にしておけ」
と、変えられてしまう。

しかし過ぎたるは及ばざるが如しで、次第々々に体重が増えていった。

「御手洗さん、少し運動しようかな。黄信号だ、こりゃ。体重がね、増えすぎてる。
どうだい、体が重いだろう? 立ち上がるのも辛いんじゃないの? 
赤ちゃんもね、大きくなりすぎると辛いんだ。奥さん自体も、相当増えてるよ。
なんにもしないというのも、かえって良くないからね。
散歩をするなりして、とに角体を動かしましょう」
と、医者の苦言を聞かされる羽目になった。


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