(二)
「あらあら、鼻息の荒いこと。でも教えるのは、商売のことだけにしてよ。
浮気の仕方なんて、金輪際教えないでよね。
とすると、女の子がいいわね。そうよ、新しい女よ。
女性経営者なんて、ちょっとしたものよね」
小夜子が、小鼻を膨らませて得意げに語る。
浮き浮きとした表情が、武蔵を嬉しくさせる。
“この女と子どものためなら、俺は何でもしてやる。
不幸にする奴が居たら、絶対に許さん。
地の果てまで追いかけてでも殺してやる”
「分かった、分かった。分かったから、心静かにしていてくれ。
そうだ、欲しいものはないか? レコードはどうだ?
聞いた話だと、クラシック音楽が良いらしい。広い心を持った子どもになるんだぞうだ。
よしよし、何枚か買ってきてやろう。
なあに、レコード店の主人に選ばせるさ。胎教に良いクラシック音楽をな。
それから…と。食べたい物はないか? 病人じゃないんだ。
何でも食べて良いんだろ? 今度の休みは駄目だが、来週に行こう。ビフテキか? 寿司か?」
日がな一日何をするでもなく過ごす小夜子だった。
ゆったりとソファに腰を下ろしての、レコード鑑賞の毎日だった。
ビッグバンドの奏でるレコードをと考える小夜子だったが
「だめだ、だめだ。赤子がビックリしてしまうぞ。クラシックだ、静かな曲にしておけ」
と、変えられてしまう。
しかし過ぎたるは及ばざるが如しで、次第々々に体重が増えていった。
「御手洗さん、少し運動しようかな。黄信号だ、こりゃ。体重がね、増えすぎてる。
どうだい、体が重いだろう? 立ち上がるのも辛いんじゃないの?
赤ちゃんもね、大きくなりすぎると辛いんだ。奥さん自体も、相当増えてるよ。
なんにもしないというのも、かえって良くないからね。
散歩をするなりして、とに角体を動かしましょう」
と、医者の苦言を聞かされる羽目になった。
「あらあら、鼻息の荒いこと。でも教えるのは、商売のことだけにしてよ。
浮気の仕方なんて、金輪際教えないでよね。
とすると、女の子がいいわね。そうよ、新しい女よ。
女性経営者なんて、ちょっとしたものよね」
小夜子が、小鼻を膨らませて得意げに語る。
浮き浮きとした表情が、武蔵を嬉しくさせる。
“この女と子どものためなら、俺は何でもしてやる。
不幸にする奴が居たら、絶対に許さん。
地の果てまで追いかけてでも殺してやる”
「分かった、分かった。分かったから、心静かにしていてくれ。
そうだ、欲しいものはないか? レコードはどうだ?
聞いた話だと、クラシック音楽が良いらしい。広い心を持った子どもになるんだぞうだ。
よしよし、何枚か買ってきてやろう。
なあに、レコード店の主人に選ばせるさ。胎教に良いクラシック音楽をな。
それから…と。食べたい物はないか? 病人じゃないんだ。
何でも食べて良いんだろ? 今度の休みは駄目だが、来週に行こう。ビフテキか? 寿司か?」
日がな一日何をするでもなく過ごす小夜子だった。
ゆったりとソファに腰を下ろしての、レコード鑑賞の毎日だった。
ビッグバンドの奏でるレコードをと考える小夜子だったが
「だめだ、だめだ。赤子がビックリしてしまうぞ。クラシックだ、静かな曲にしておけ」
と、変えられてしまう。
しかし過ぎたるは及ばざるが如しで、次第々々に体重が増えていった。
「御手洗さん、少し運動しようかな。黄信号だ、こりゃ。体重がね、増えすぎてる。
どうだい、体が重いだろう? 立ち上がるのも辛いんじゃないの?
赤ちゃんもね、大きくなりすぎると辛いんだ。奥さん自体も、相当増えてるよ。
なんにもしないというのも、かえって良くないからね。
散歩をするなりして、とに角体を動かしましょう」
と、医者の苦言を聞かされる羽目になった。
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