昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

心象風景 第二弾:ある時の彼 (朝の電車内)

2010-05-07 20:52:48 | 小説
首都圏の地下鉄ほどではないが、
G市でも朝の電車は混みに混む。
そして、
ただでさえ苛立つこの窮屈さに、
輪をかけるようなこの蒸し暑さ。

日本の夏は、
兎に角恐ろしいほどに蒸し暑い。
時として、
夢遊状態に陥る者さえ出る。

誰彼の見境がつかず、
異常な程の親近感を感じるようだ。
(親近感、・・相手は迷惑だろうが。)

が、
それにしても暑い。

電車は狭い。
絶対量の決まった所へ、
その二倍も三倍も詰め込んだとすれば、
窮屈なのは当たり前である。

そして互いに、
自分の領分を保持することは不可能である。
他人の領分に自分自身が入り込んでいるような、
そんな気分になる。

どれが自分の足で
どれが他人の足なのか
区別できなくなる。
最後には、
自分自身の身体さえ自分の所有とは思えない、
そんな錯覚を起こしてしまう。

何せ、
自分の意志に反した動きを取ってしまう、
否、
取らされてしまうのだから。

彼の右手は吊り革にある。
そして左手は、
どこにやるともなくブラリとしている。

彼の手は、
至極ふつうの手故に身体の半分位の長さである。
ということは、
当然ながら足の太ももあたりに位置している。

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