昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~ (九十三) 金が嫌いな人間は居ないってことさ

2014-07-28 09:03:32 | 小説
(十) 

「婦長! 先生が到着されました」
薄暗い廊下の先から、タイミング良く声がかかった。

「はい、今行くわ。分かりました、とりあえずこれは、お預かりということで」
と、手渡された封筒をポケットに入れて立ち去った。

「お客さん、有名人なんですね」
後ろから運転手が声をかける。
事の成り行きに興味を持って、顛末を見届けるまではと息を潜めていた。

「いや、そうじゃない。ま、金が嫌いな人間は居ないってことさ。
お前さんだって、金は好きだろうが。金はな、貯めこんじゃ駄目だ。
キチンと遣うべき時に遣ってやらなきゃ」

“半端じゃない額を掴ませたんだ。無事出産を終えたら、改めて相応の礼もと伝えてあるし。
医者も必死だろうさ。しかしま、看護婦にも良い思いをさせなきゃな。片手落ちってもんだ。
何といっても、産後は看護婦次第だろうから。
小夜子のことだ、我がままいっぱいを押し通すだろうし。
看護婦も手なずけておかなきゃな”


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