昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

鼠小僧次郎吉 ~さると猿回し~ 二十

2010-08-20 23:14:21 | 小説
次郎吉は、
焦らずじっくりと構えた。
そして勿論、
内部の者に頼ることもやめた。

が、
見取り図の無いことは辛かった。
広い大名屋敷である、
やみくもに動き回っていては、
いつ何どき
警護の武士に見つからぬとも限らない。

次郎吉は思案に暮れる日々を送った。
さすがに焦れ始めた次郎吉の所に、
博打好きの中間の話をする、
飲み仲間が現れた。

次郎吉は、
心中で
“シメタ!”と
手を叩きながらも、
気乗りのせぬ顔つきで話を聞いた。

そして、
明晩の博打を約束して別れた。

その中間は、
約束の刻限よりも早くから、
飲み屋で待っていた。

次郎吉は、
一目見てズブの素人と見抜くと、
わざと立て続けに負けた。
もっとも、
次郎吉自身にも博才はまるで無かったが。

「いゃあ、
強い、強い。
俺っちも強いと思ってやすが、
お前さんにはかなわねえ。」

「まぁ、
屋敷内では俺が一番だな。
最近じゃ、
誰も誘わなくなっちまった。
尻の穴が小さい奴ばかりでな。
屋敷と言えば、
この間なんか・・・」

酒の勢いも手伝い、
聞きもしない
屋敷内の裏話を
得意げに喋り始めた。

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