昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~ (七十) 妻を娶らば才たけて

2013-11-11 19:18:27 | 小説
(八)

“外に女を囲うのは、一にも二にも、その為だわさ。
女房には求められねえアホさ加減を、男は求めるんだから。
といって、そんな女を女房にはできない。
対外的にまずい。
♪妻を娶らば才たけて、見目麗しく情けあれ♪だ”
と、一人にやつく武蔵だ。

「御手洗さま、失礼致します。
女将のぬいでございます」
カラカラと格子戸の開く音がして、襖がすっと開いた。

「やあやあ、すみませんです。
お忙しいだろうに、女将を呼んだりして」
大仰な手振りで、女将の手を取る武蔵だ。

“ほお、これはこれは。
華奢に見えたが、どうしてどうして。
細い指ではあるけれども、結構力があるぞ。
握り返してくるこの感じ、中々のものだ”

「とんでもございません。
すぐにお伺いするつもりが、遅くなってしまいました。
本当に申し訳ありません。
改めまして、本日は当高野屋旅館にお出でいただきまして、誠にありがとう存じます。
誠心誠意、務めさせていただきます」



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