人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

アジアは一つ~チョン・ミュンフン指揮アジア・フィルを聴く

2011年08月03日 06時27分11秒 | 日記
3日(水)。昨日サントリーホールでチョン・ミュンフン指揮アジア・フィルハーモニーの演奏会を聴いてきました。チョンは1953年ソウル生まれ。74年のチャイコフスキー国際コンクール・ピアノ部門で第2位入賞という実力の持ち主でもあります。その後はベルリン・フィル、ウィーン・フィルなど世界のオーケストラを振って、現在はフランス国立放送フィル、アジア・フィル、ソウル・フィルの音楽監督を兼任しています。日本では東京フィルのスペシャル・アーティスティック・アドバイザーを務めています。私も東京フィルを振ったマーラーやブラームス、ベートーベン、ベルリオーズなど数々の名演奏を聴いてきました。彼の特徴は暗譜で指揮することです。

アジア・フィルハーモニーは97年に日本で設立(現在は韓国に拠点を置く)されました。「クラシック音楽を欧米から招聘する時代は終わった。アジアから発信する時代が来た」と主張するチョン・ミュンフンの呼びかけに呼応して、今回も100名あまりの有志が参加しています。毎年、夏の約1週間という短期間に3~4公演しか行われませんが、その名を世界に轟かせています プログラムのメンバー表を見るとソウル・フィルのメンバーが圧倒的に多く,日本からはN響,東フィル,都響,新日フィル,読売日響,大阪フィル,群馬響,神奈川フィルから参加しています.いずれも主席レベルの演奏者です

プログラムはチョン・ミュンフン得意の2曲①ベートーベン「交響曲第7番イ長調」と②ブラームス「交響曲第1番ハ短調」です。座席は1階9列16番と前の方の中央通路寄り.一昨日よりもずっと見渡しがいい席です.

第1曲目のベートーベン「第7交響曲」が始まりました.もちろんチョンは暗譜です.力強い導入部,いい感じです ところが,第1楽章終盤に至ってコンサート・マスターのバイオリンの弦が切れているのが見えます.”やばいぞ”と思っていると,その楽章はそのまま演奏を続け,第2楽章に入る前に,隣の副コンマスのN響・山口さんを介して自分のバイオリンと山口さんの後部席の女性バイオリニストのバイオリンと交換して第2楽章の演奏に移りました.普通だと,トップ奏者の弦が切れた場合は,後ろの席のバイオリンと交換して,切れたバイオリンは順繰りに後ろの席に回して,最後列のバイオリニストがそのバイオリンを持って舞台袖に引っ込み,修正したうえでまた登場して,後ろから前に順繰りに手渡していくのですが,今回は1対1の交換で,特別だったようです.万全の準備をしているのでしょうが,本番では何が起こるかわかりません.緊急時の対応も能力の一つでしょう

チョンの指揮の素晴らしさは圧倒的な集中力と優れたバランス感覚です.とくにこのベートーベンの第7交響曲の場合,最終楽章のフィナーレでのチェロとコントラバスの低弦の”うねり”は何ともいえない快感を感じます 聴こえるか聴こえないかわからない演奏だと欲求不満になります とくにチェロは皆が体を右に左に傾けて”乗りに乗った”演奏を展開しています 見ていてとても楽しそうです.そして,最後の一音が鳴り終わるや否や ”ブラボー”の嵐です.チョンは舞台に5回呼び戻されました.

休憩後のブラームスの第1交響曲はティンパニの連打で始まりますが,最初から引き締まったいい演奏です オーボエがものすごくうまいのです.この曲でもバランスが取れたいい演奏を展開します.すべてのメンバーがチョンの指揮のもとで演奏するために集まってきたことがよくわかる集中力のある演奏です.こちらも,終わるや否やとブラボーの嵐,そしてスタンディング・オベーションとなりました.

何回も拍手で呼び戻されたチョンが,会場を制して,日本語で「スバラシイ オーケストラ」,「ウツクシイ オーケストラ」.後ろを振り返って「ジャパニーズ,チャイニーズ,コリアン,オール・トゥゲザー」と言うと,会場の聴衆も舞台のオケ・メンバーも喝さいでした.まさに演奏する側と聴く側の心が一つになった瞬間でした そして「アンコール,ベートーベン,フィフス・シンフォニー,フォース・ムーブメント,フィナーレ」と言って振り返り,指揮棒を振り下ろしました.常識的に考えればブラームスのハンガリー舞曲の何番かが適当なところでしょう.ところがベートーベンの第5番”運命”の最終楽章を演奏すると言うのです

それはそれは凄い”乗りに乗った”演奏でした.これだから生演奏は止められないのです 今日のような演奏が聴けた日は本当に”生きていてよかった”と思います.今までのところ,今日の演奏が今年のベストです

     

ところで、今日はモーツアルトが「ポストホルン・セレナーデK320」を完成した日です 1779年8月3日のことでした。7つの楽章から成る大規模な曲ですが、モーツアルトがどのような経緯でこの曲を作曲したのかは不明です。第6楽章の第2トリオでポストホルン(郵便馬車のホルン)が用いられていることからこのタイトルで呼ばれています。それぞれの楽章にモーツアルトの魅力が詰まっていて大好きな曲です CDは①カール・べーム指揮ウィーン・フィル②ジョージ・セル指揮クリーブランド管弦楽団の演奏が双璧です。

    
コメント
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