人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

モーツアルト「ドン・ジョバンニ」を観る~英国グラインドボーン音楽祭2010年公演の映画から

2011年08月24日 06時25分14秒 | 日記
24日(水).昨日は朝のうちは涼しかったですが,午後から急に暑さがぶり返してきました 猛暑の復活はあなたも望まないざんしょ?

という訳で,昨日,新宿バルト9で「ワールド・クラシック@シネマ・2010」シリーズのうち,英国グラインドボーン音楽祭の昨年7月公演=モーツアルト「ドン・ジョバンニ」を観てきました 10分の休憩時間を挟んで3時間15分でした.

グラインドボーン音楽祭は,ロンドン郊外にあるグラインドボーンで開かれる,イギリスの音楽祭の中でも最もステータスが高く,チケットが取りにくい音楽祭と言われており,新人歌手の登竜門とも言われている権威ある音楽祭です ソプラノのキリ・テ・カナワが若き日にグラインドボーンでモーツアルト「フィガロの結婚」の伯爵夫人を歌ったレーザーディスクを持っていました.処分して今はありませんが,彼女はあの音楽祭を足がかりに世界のオペラ界にデビューしたのではなかったでしょうか

この公演の特徴は3つ.1つはオーケストラが古楽器を使用する「エンライトメント管弦楽団」が演奏していること.もう一つはジョナサン・ケントによる演出が時代設定を現代に置き換えていること.そして3つ目は一人も世界的に知られている歌手が登場しないことです(イギリス国内は除いて).これらすべてが,米メトロポリタン・オペラとは対極的な立場にあります.しかし,水準が高いことは一目瞭然です

序曲の劇的な音楽が鳴り響きます.古楽器特有の”くすんだ”ような音が会場を満たします.モーツアルトはこの序曲をワインを飲みながら,妻のコンスタンツェとおしゃべりをしながら,たったの1晩で書き上げた,その筆跡に書き直した跡がないと言われています.本当の天才の証明でしょう 私は序曲が終わってレポレロが登場,「もう人に使われるのはまっぴらだ」などと歌っているところへ,ドン・ジョバンニがドンナ・アンナに追われて出てきて歌でやり取りするシーンが大好きです.弾むような音楽が用意されています

チラシによると,ドン・ジョバンニはジェラルド・フィンリーが歌うとありますが,女性2人=ルカ・ピサローニ,アンナ・サムイルのどちらがドンナ・アンナを歌い,どちらがドンナ・エルビーラを歌うのか分かりません.どちらにしても,レポレロ役,ツェルリーナ役を含めて,主役級の歌手陣は粒が揃っていました

演出で驚いたのは,第1幕冒頭のドン・ジョバンニと騎士長の決闘シーンです.これまでの”伝統的な”オペラではお互いに剣で戦って,騎士長が刺されて死ぬのですが,この演出ではドン・ジョバンニがレンガで騎士長の頭を殴りつけて死なせるのです もう一つは,最後の騎士長の亡霊が出てくるシーンです.”伝統的な”オペラでは騎士長の石像が動いて声を出すのですが,この演出ではドン・ジョバンニが食卓をひっくり返すと,そこが騎士長の棺おけになっていて,そこから亡霊が出てきて声を出すのです.まったく意外な展開です

古楽器のオーケストラの伴奏と現代的な演出とのコラボレーションによって展開された今回の音楽祭.グラインドボーンならではの先進的な試みだったように思います.いいと思います

ところで,今日はモーツアルトの「バイオリン・ソナタ第42番イ長調K.526」が作品目録に記入された日です.有名な「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」と「ドン・ジョバンニ」にはさまれる形で1787年8月24日に完成しました.演奏はバイオリンのスーク,ムター,グリュミオー,ボスコフスキーなどで聴いてきましたが,この曲に関してはヒラリー・ハーンのバイオリン,ナタリー・シューのピアノによる演奏がベストです.この躍動感を何と表現したらいいのでしょうか これこそモーツアルトです

      
コメント (2)
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