14日(日).最近,目覚まし時計の調子がおかしいのです.今朝も6時に仕掛けておいたのに鳴りませんでした.しかたなく30分後に自力で起きました.明日からまた仕事が始まるので”目覚し”い活躍をしてもらわなくてはいけないのに,困ったものです
明日は月曜日,鳴らないならほっ”とけい”というわけにはいかないのです
閑話休題
昨日,東京交響楽団の「第62回オペラシティシ・リーズ」コンサートを聴いてきました
プログラムは①プロコフィエフ「古典交響曲ニ長調」②ストラビンスキー「バイオリン協奏曲ニ調」③ベートーベン「交響曲第4番変ロ長調」の3曲です.
当初,指揮はメトロポリタン・オペラを振ったこともあるニコラ・ルイゾッティだったのですが,”やむを得ない事情”により来日不可となり,代わりにルーマニア生まれでイル・ド・フランス国立管弦楽団主席指揮者のヨエル・レビィがタクトを取ることになりました.また,バイオリンのセルゲイ・クリロフは,原発事故の影響をおそれ来日しなくなり,代わりに2008年ロン・ティボー国際コンクール優勝者,1987年生まれのシン・ヒョンスが弾くことになりました
指揮者の交代は残念ですが,バイオリニストの交代は大歓迎です
彼女の演奏は2009年2月にロン・ティボー国際コンクール入賞者ガラコンサートでプロコフィエフのバイオリン協奏曲を聴きましたが,その優れた感性に衝撃を受け,それ以来すっかり彼女のファンになりました
オーケストラの配置を見るといつもの東響と違い,チェロとビオラが逆になっています.つまり舞台に向かって左から第1バイオリン,第2バイオリン,ビオラ,チェロ,その後ろにコントラバスという配置を取っています.プログラムからして,指揮者のレビィがベートーベンの第4交響曲の音響効果を狙った”ベートーベン・シフト”を敷いたのではないかと思います
第1曲目のプロコフィエフ「古典交響曲」は,作曲者がペテルブルク音楽院卒業後の1916年から翌年にかけて作曲されたもので,彼は「もしハイドンやモーツアルトが20世紀にいたならば書いたに違いない交響曲を作る」と言って作曲した15分程度の短い曲です.レビィは大柄な肢体を駆使して軽やかにオケをコントロールします
さて,いよいよ待ちに待ったシン・ヒョンスの登場です.輝くブルーのコスチュームに包まれて颯爽とステージに現れました
ストラビンスキーの「バイオリン協奏曲二調」.この曲は,1910年代のロシア・バレエの時代,1920年代から40年代にかけて新古典主義の時代,1950年代からの12音技法に接近した宗教音楽の時代に大別される彼の作曲時期のうち新古典主義の時代に作曲されました.曲は「トッカータ」「アリア1」「アリア2」「カプリッチョ」の4つの楽章から構成されています.聴いていて思うのは技術的に非常に難しい曲ではないかということです.ただ,リズムにしても,メロディーにしても聴いている人を飽きさせない工夫が盛り込まれています
最初のトッカータはバイオリンの音がややおとなしいのではないか,と思ったのですが,聴いているうちに慣れてきたせいか,彼女の抜群のテクニックと,出てくる音の美しさに思わず指で拍子を取っていました
こんなことは滅多にありません.彼女の集中力は聴衆に伝播して,余計なことを考える余裕を与えません.とにかく彼女の演奏に”引き込まれてしまう”というのが正しい表現方法でしょう.圧倒的な存在感,人を引き付けて離さない魅力があります
鳴り止まない拍手に応えてクライスラーの「レチタティーボとスケルツォ・カプリス作品6」を演奏しましたが,ときにドボルザークのような民族色豊かな音で,ときに鋭いアタックで,聴衆を魅了しました.聴衆の拍手に応える彼女の表情は,下にあるポートレートのような大人びた感じではなく,もっと幼いというかあどけない印象を受けました
彼女の演奏でプロコフィエフの協奏曲をもう一度聴きたい
ショスタコービィチも聴きたい,もちろんチャイコフスキーも・・・・・とにかく,あらゆるバイオリン協奏曲を彼女の演奏で聴いてみたいと思わせる魅力に溢れています
シン・ヒョンスのバイオリンを聴いて大満足だったので,もう帰ろうかと思ったのですが,せっかく来たのだから最後まで聴いていこうと思い,ベートーベンに賭けることにしました
ベートーベンの第4交響曲は,準備万端で作曲するいつものスタイルを取らず,ベートーベンにしては珍しく即興的に作曲したと言われています.背景には当時,ヨゼフィーネ・フォン・ダイム伯爵未亡人と恋愛関係にあったことがあるようです.全体的な印象として,”舞踏の権化”と言われる彼の第7交響曲とよく似ています
指揮のレビィは大柄で,指揮ぶりも体に比例してダイナミックで「なに,ベートーベン?お父さんにまかせなさい」というような安定感というか,安心感があって,オーケストラのメンバーが大きな腕の中に包まれながら思い通りに演奏しているという印象がありました
彼の指揮姿を見ていて「スベトラーノフに似ているなあ」と思いました.自身の巨体をコントロールしながらオケをコントロールしていました.包容力がある”愛すべき”巨匠で,彼の指揮が大好きでしたが,彼はもういません
さて,第2楽章が終わり第3楽章に移ろうとするときのことです.なかなか演奏が始まりません
気になって舞台上を見ると,オーボエ奏者が後ろのクラリネット奏者の方を振り返って,さかんに声を掛けています.クラリネット奏者は男女1人ずついますが,どちらかに何かトラブルがあったらしいのです
しばらくすると,入り口により近い女性奏者が舞台袖に引き込んで,新たなクラリネットを携えて再び自席に着きました.指揮者の影で,彼女が自分でその楽器を使ったのか,あるいは隣の男性奏者に渡したのか見えませんでした.その間,5分も無かったかもしれませんが,すごく長く感じました.指揮者レビィは何事もなかったかのように第3楽章を始めました.そして第4楽章も何の問題もなく演奏が続き,フィニッシュを迎えました
拍手に応えて,レビィはまず管楽器全員を立たせました.もちろんクラリネットの2人も立ち上がり「さっきはどうも」「いやあ大変でしたね」みたいな会話をしながらニコニコして拍手に応えていました.レビィの懐の広さを感じました
それでも鳴り止まない拍手に応えて,フルートを1本追加して,何とベートーベンの「コリオラン序曲」を演奏しました
ベートーベンのアンコール曲と言えば「エグモント序曲」か「コリオラン序曲」か「レオノーレ序曲(1~3番のいずれか)」になるのでしょうが,最後に静かに終わる「レオノーレ序曲」が選ばれるとは思ってもいませんでした
それは白熱した素晴らしい演奏でした



閑話休題
昨日,東京交響楽団の「第62回オペラシティシ・リーズ」コンサートを聴いてきました

当初,指揮はメトロポリタン・オペラを振ったこともあるニコラ・ルイゾッティだったのですが,”やむを得ない事情”により来日不可となり,代わりにルーマニア生まれでイル・ド・フランス国立管弦楽団主席指揮者のヨエル・レビィがタクトを取ることになりました.また,バイオリンのセルゲイ・クリロフは,原発事故の影響をおそれ来日しなくなり,代わりに2008年ロン・ティボー国際コンクール優勝者,1987年生まれのシン・ヒョンスが弾くことになりました



オーケストラの配置を見るといつもの東響と違い,チェロとビオラが逆になっています.つまり舞台に向かって左から第1バイオリン,第2バイオリン,ビオラ,チェロ,その後ろにコントラバスという配置を取っています.プログラムからして,指揮者のレビィがベートーベンの第4交響曲の音響効果を狙った”ベートーベン・シフト”を敷いたのではないかと思います

第1曲目のプロコフィエフ「古典交響曲」は,作曲者がペテルブルク音楽院卒業後の1916年から翌年にかけて作曲されたもので,彼は「もしハイドンやモーツアルトが20世紀にいたならば書いたに違いない交響曲を作る」と言って作曲した15分程度の短い曲です.レビィは大柄な肢体を駆使して軽やかにオケをコントロールします

さて,いよいよ待ちに待ったシン・ヒョンスの登場です.輝くブルーのコスチュームに包まれて颯爽とステージに現れました


最初のトッカータはバイオリンの音がややおとなしいのではないか,と思ったのですが,聴いているうちに慣れてきたせいか,彼女の抜群のテクニックと,出てくる音の美しさに思わず指で拍子を取っていました


鳴り止まない拍手に応えてクライスラーの「レチタティーボとスケルツォ・カプリス作品6」を演奏しましたが,ときにドボルザークのような民族色豊かな音で,ときに鋭いアタックで,聴衆を魅了しました.聴衆の拍手に応える彼女の表情は,下にあるポートレートのような大人びた感じではなく,もっと幼いというかあどけない印象を受けました



シン・ヒョンスのバイオリンを聴いて大満足だったので,もう帰ろうかと思ったのですが,せっかく来たのだから最後まで聴いていこうと思い,ベートーベンに賭けることにしました

ベートーベンの第4交響曲は,準備万端で作曲するいつものスタイルを取らず,ベートーベンにしては珍しく即興的に作曲したと言われています.背景には当時,ヨゼフィーネ・フォン・ダイム伯爵未亡人と恋愛関係にあったことがあるようです.全体的な印象として,”舞踏の権化”と言われる彼の第7交響曲とよく似ています

指揮のレビィは大柄で,指揮ぶりも体に比例してダイナミックで「なに,ベートーベン?お父さんにまかせなさい」というような安定感というか,安心感があって,オーケストラのメンバーが大きな腕の中に包まれながら思い通りに演奏しているという印象がありました


さて,第2楽章が終わり第3楽章に移ろうとするときのことです.なかなか演奏が始まりません



拍手に応えて,レビィはまず管楽器全員を立たせました.もちろんクラリネットの2人も立ち上がり「さっきはどうも」「いやあ大変でしたね」みたいな会話をしながらニコニコして拍手に応えていました.レビィの懐の広さを感じました

それでも鳴り止まない拍手に応えて,フルートを1本追加して,何とベートーベンの「コリオラン序曲」を演奏しました




