22日(日)。わが家に来てから今日で2416日目を迎え、ロシアのプーチン大統領は20日、モスクワでドイツのメルケル首相と会談し、会談後の記者会見でアフガニスタン情勢に関連し、「他国から政治行動の規範を押し付けることはできない」と述べ、人権尊重などでイスラム主義組織タリバンへの圧力を強める米欧を牽制したと いうニュースを見て感想を述べるモコタロです
その発言は 政敵を毒殺しようとしたことに対する批判への牽制と受け止めておこう
荒井晴彦、森達也、白石和彌、井上純一共著「映画評論家への逆襲」(小学館新書)を読み終わりました 共著と書きましたが、本書は 彼らが「ミニシアター押しかけトーク隊『勝手にしゃべりやがれ!』」と称して、コロナ禍に苦しむミニシアターに押しかけて開いた座談会が元になっています
荒井晴彦は1947年東京都出身。季刊誌「映画芸術」編集・発行人、若松プロの助監督を経て、脚本家としてデビュー 「Wの悲劇」「遠雷」「火口のふたり」などを手掛ける
森達也は1956年広島県出身。立教大学在学中に映画サークルに所属し、テレビ番組制作会社を経てフリーとなる 「A」「A2」「FAKE」「i 新聞記者ドキュメント」などのドキュメンタリーを手掛ける
白石和彌は1974年北海道出身。若松孝二監督に師事し、助監督を務める 「孤狼の血」で大きな話題を呼ぶ。今月「孤狼の血 LEVEL2」が公開された
井上純一は1965年愛知県出身。大学入学と同時に若松孝二監督に師事し、助監督として活躍、「誰がために憲法はある」などを手掛ける
朝日の書評によると、「4人は名うてのウルサ型」らしく、本書のタイトル「映画評論家への逆襲」にしても、帯にある「勝手に観るな、この映画はこう観ろ」にしても、読者を意図的に挑発しています 彼らの主張を端的に言い表しているのは荒井氏の次の発言です
「相撲、野球で解説するのは元力士や選手だけど、映画だけはその辺のバカが観ただけで語っている ある時期から新聞も週刊誌でも けなす映画評が載らなくなった 今は映画評論家は映画会社の宣伝部みたいになって、当たり障りのない作品の紹介と誉めだけになっている」
荒井氏の発言から考えると、本書のタイトルは「SNSで書きたい放題書いているバカな観衆と、映画会社の宣伝部に成り下がった映画評論家への逆襲」と言い換えることが出来るかもしれません。その辺のバカな観衆の一人として、いまこの本を紹介しています
「はじめに」で井上氏は次のように書いています
「2019年の映画公開本数は1278本。その内の70%、約900本が全映画館のスクリーンのわずか6%を占めるだけのミニシアターでしか公開されない それがなくなったら、福島や沖縄やミャンマーやシリアや香港の雨傘運動や東京裁判のドキュメンタリーも劇映画も観られなくなってしまう そういう意味で、ミニシアターは民主主義の多様性を担保する、表現の自由の最前線、と言っても決して大袈裟ではないだろう」
こうしたことから、彼らはミニシアターを救うため「SAVE the CINEMA」運動を始め、その一環として座談会が行われ、本書の出版に至っているわけです
本書は次の7章から構成されています
第1章「『仁義なき戦い』は国家と戦争を告発する」
第2章「ポン・ジュノ監督、あるいは表現の時代の奇しき関係について」
第3章「若松孝二監督の伝説と生身」
第4章「憲法映画論、そして加害と被害をめぐるドキュメンタリーの核心へ」
第5章「デニス・ホッパーとアメリカン・ニューシネマ、または自由の行方について」
第6章「高倉健VSイーストウッド、顔に刻まれた男の来歴」
第7章「評論家への逆襲、さらに映画の闘争は続く」
上記のうち第1章については、私はほとんどヤクザ映画は観ていないので歯が立たないというのが実感です 第3章については、若松孝二という監督が日本の映画界で大きな存在であったことを初めて知りました 本書で一番面白いのはやはり第7章でしょう 2020年の「第94回キネマ旬報ベスト・テン」の第1位に選ばれた「スパイの妻」(黒沢清監督)などが俎上にあげられていますが、荒井氏らからケチョンケチョンにけなされています この作品に限らず荒井氏が主張しているのは、ディテールをきちんと描くことの大切さです 彼が例に挙げているのは、富永昌敬監督「パンドラの匣」(2009年)です。原作は太宰治による1946年の小説ですが、当時はバスといえばボンネットバスしかなかったのに、映画では鼻ペチャバスが走っていた これについて映画プロデューサーに指摘したら「だって、ないんです」という答えが返ってきた 「じゃあ、撮るな!」ってんだよ、と荒井氏はいきり立ちます これについて荒井氏は「映画を舐めている監督と、それを許している客がいる」と指摘します
また、監督と脚本家との関係については、「世間の人は映画って監督と役者だけで作っていると思っている。セリフも役者が自分で考えて言ってるんだと」「まず脚本があってそれを監督が映画化するという関係にある。ハリウッドの映画のクレジットは『 WRITTEN AND DIRECTED BY 誰それ 』となっている。しかし、日本の場合は映画監督・脚本家の順番になっている。これはおかしい」と、もっと脚本家を重要視すべきであると語っています
普段、何気なく映画を観ていますが、映画の製作サイドからの捉え方・考え方を読むと、映画の観かたが変わってくるような気がします 映画ファンにはたまらない1冊です。お薦めします