8日(水)。わが家に来てから182日目を迎え、またしてもテレビのコードをかじって叱られるモコタロです
ご主人は危険が危ないと言うけれど 美味いんだよねこれが
閑話休題
昨日から朝日夕刊・文化面で吉田純子編集委員の「音を継ぐ 戦後とクラシック」の連載が始まりました 第1回目の昨日は「絵になる男 届けたテレビ~ヘルベルト・フォン・カラヤン」です。カラヤンは何回か来日してコンサートを開いていますが、その時のエピソードを紹介しています
「ある日、番組を見たカラヤンがディレクターに尋ねた。『君たちは楽譜を見ながら撮っているのか?』。生放送にも関わらず、主題を奏でる奏者をミスなくぴったりとらえ、どんな壮大な交響曲をも映像で視覚的に構成する技術に巨匠は驚いた オーケストラの中継は、欧米ですら、まだ一般的ではなかった。その秘密はHHKが独自につくったB5判の台本にあった。画面を切り替える場所を決め、楽譜に番号を記してゆく。3台のカメラに各番号をどう割り振るのか、台本に書き込む。『カラヤンが気に入って持ち帰っていた』と元チーフディレクターのS氏は明かす
」
これをきっかけに、カラヤンは演奏の映像化に強い関心を示すようになります。「1回のコンサートでは限られた人数しか聴くことができない。しかし、テレビなら世界中の人々が見られる また、それをパッケージにすれば、誰でも再生して観ることが出来る
」と考え、演奏をレーザーディスクなどに収録して販売するようになります。「商業主義に脱している」「いや、クラシック音楽の大衆化に立派に貢献している」と市井の評価は分かれましたが、好き嫌いは別として、間違いなくカラヤンは日本におけるクラシック音楽の普及に大きく貢献したと思います
も一度、閑話休題
昨夕、初台の東京オペラシティコンサートホールで松田華音「CD発売記念ピアノ・リサイタルを聴きました プログラムは①ベートーヴェン「ピアノ・ソナタ第21番ハ長調”ワルトシュタイン”」、②ショパン「バラード第1番ト短調」、③同「ポロネーズ第6番変イ長調”英雄”」、④ラフマニノフ「幻想小品集」より第2曲「前奏曲”鐘”」第3曲「メロディ」、⑤同「10の前奏曲」より第5番ト短調、第4番ニ長調、第2番変ロ長調、⑥スクリャービン「8つの練習曲」より第4番、第5番、⑦同「ワルツ 変イ長調」、⑧シューマン/リスト「献呈」です
自席は1階18列11番、センターブロック左通路側席です。客足を心配していたのですが、会場に入って「おっ」と思いました。予想以上の8割くらい埋まっている感じです
というのは、すでに紀尾井ホールで日本デビュー・リサイタルを、ほぼ同じプログラムで開いているからです
この日のプログラムもCDに集録された作品を中心に組まれています
松田華音は1996年生まれといいますから今年はまだ弱冠19歳です 4歳でピアノを始め、6歳でモスクワに渡り、7歳でロシアの名門グネーシン記念中等(高等)音楽専門学校ピアノ科に第1位で入学、数々のピアノ・コンクールで優勝しています
昨年9月、モスクワ音楽院に日本人初となる政府特別奨学生として入学。11月にドイツ・グラモフォンからCDデビューしました
私の場合はこのCDを聴いて、「この演奏は本物か?生で同じ演奏ができるのか?」ということを確かめたくて聴きに出かけたようなものです
ステージに現われた松田華音は長い髪をリボンで束ね、ベージュ色のフリル付のロングドレスで登場、ピアノに向かいます しばし下をうつむき意識を集中して、両手を挙げてワルトシュタインの演奏に入ります
この曲は彼女が1年生の時、グネーシンの卒業演奏会で最上級のユリアンナ・アヴデーエワが演奏したのを聴いて深く魅了されたといいます
CDで聴くよりも柔軟性をもって弾いているように思います。一言で言えば躍動感溢れる演奏です。フィナーレのたたみかけは圧巻でした
2曲目と3曲目はショパンの曲です。バラード第1番ト短調とポロネーズ第6番”英雄”を演奏します。彼女の演奏は力強く、深く心に入ってきます
後半の最初はラフマニノフの幻想的小品集から第2曲「前奏曲”鐘”」と第3曲「メロディ」です。第2曲「鐘」の深い響きが印象的です プログラムの後半は曲と曲との間を置かず演奏するようです。次いでラフマニノフ「10の練習曲」より第5番、第4番、第2番が演奏されます。第5番ト短調の独特の低いリズムが心の底に響き渡ります
まるで大地に根を下ろしたかのような重力のある演奏です。次いでスクリャービン「8つの練習曲」より第4番と第5番、そして「ワルツ 変イ長調」が続けて演奏されます。最後はシューマン/リスト「献呈」です
CD解説の中で、彼女は「みなさん12年間ありがとう、という想いで選びました」と語っています
その意味では、この日の演奏は会場にいる聴衆に向けた感謝のメッセージだったのでしょう
この曲は彼女のCDで聴いて好きになった曲であることを告白します
大きな拍手とブラボーが飛び交う中、松田華音は前に一礼、後ろに一礼、また前を向いて一礼します アンコールのためピアノに向かう途中、自分の長いドレスの裾を踏んでよろけそうになりましたが、そこはご愛嬌です
アンコールにチャイコフスキーの「18の小品」から第16番「5拍子のワルツ」を軽快に演奏、鳴り止まない拍手に、CDの最後に集録されている松田華音(かのん)の名刺代わりの曲、パッヘルベル/藤満健・編「カノン」を演奏しました
終演後、ロビーでサイン会があったので6番目に並びました。こういう時に通路側席は有利なのです サイン会に現われた松田華音は、思ったよりずっと小柄だったのでびっくりしました
いったい、こんな小柄な身体のどこにあのパワーが隠されているのだろうと不思議に思ったくらいです
松田華音の演奏の特徴はどんなものでしょうか?CDの解説を書いている伊熊よし子さんは「目力の強い音楽」と言う言葉で表現していますが、言い得て妙です 初めて彼女の演奏を生で聴いた感想は「力強く躍動感溢れるスケールの大きな音楽」です
天才マルタ・アルゲリッチ以来、ショパン国際コンクールで女性として45年ぶりに優勝し、またグネーシン記念中等(高等)音楽専門学校の先輩でもあるユリアンナ・アヴデーエワを超える日が来るかもしれない、と期待を抱かせるのに十分なコンサートでした。これから萩原麻未とともに応援したいと思います
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