7日(日)。昨日の日経・別刷り「プラス1」の”その違いわかりますか”のコラムが「なおざりとおざなり」を取り上げていました 「なおざり」は”いい加減にしておくさま”で,「おざなり」は”いい加減に物事を済ませること”とのことです.いい加減,適当というニュアンスが共通しています.したがって,「スタッフの接客がおざなりだった」というのは,「スタッフの態度が適当(いい加減)だった」という意味で,「スタッフの接客がなおざりだった」というのは,「スタッフが接客せずに放っておいた」という意味になります
この連載コラムは松田亜希子さんというライターが書いていますが,似たような言い回しを取り上げ解説しており毎週楽しみにしています.なおざりにできません
閑話休題
昨日、すみだトリフォニーホールで「オール・アバウト・ハインツ・ホリガ―第1日:協奏曲&指揮」を聴きました プログラムは①モーツアルト「オーボエ協奏曲ハ長調K.314」、②シューマン「交響曲第2番ハ長調」,③ホリガ―「音のかけら」、④ラヴェル「ラ・ヴァルス」で、ホリガ―自身が新日本フィルを指揮をしてオーボエを演奏します
コンマスは西江辰郎さんです.
自席は1階12列15番.会場は7~8割埋まっている感じでしょうか オーケストラがスタンバイしますが,モーツアルトの曲のため30人程度の小編成です.指揮台はなく,平場で指揮をします.指揮者兼オーボエ・ソロのホリガーの登場です.かなり髪の毛がすっきりしていて涼しそうです
オーボエを片手に第1楽章を指揮します.軽快な音楽が流れ,すぐにオーボエのソロに入り,明るい曲想が展開します このオーボエ協奏曲はフルート協奏曲第2番ニ長調に編曲され,ともにK.314のケッヘル番号を持ちます
各楽章の終結部分にカデンツァがあり,ソリストの名人芸が披露されますが,さすがのホリガーも歳のせいか息継ぎが若干苦しそうです
とはいうものの出てくる音は素晴らしいのひと言です
ホリガーは楽章と楽章の間をあまりあけずに次の楽章に入ります.モーツアルトらしい軽快な演奏でした
2曲目のシューマン「交響曲第2番ハ長調」は,1845年の12月から10か月かけて作曲され1847年11月にメンデルスゾーン指揮ゲヴァントハウス管弦楽団によって初演されました ホリガーはシューマンがお気に入りのようで,第2日の公演のプログラムにもシューマンが2曲が入っています.しかも交響曲は,有名な第1番”春”でも第3番”ライン”でもない第2番を取り上げるところは指揮者ホリガーの面目躍如といったところでしょうか
ホリガーは今度はタクトを持って指揮台に上がります.第1楽章の冒頭の序奏はこの曲の第1関門ですが,管楽器が若干不安定になったのが気になりました.ただ,すぐに回復して演奏の波に乗りました この交響曲で一番の聴きどころは第3楽章「アダージョ・エスプレッシーヴォ」です.オーボエの独奏によりカンタービレが奏でられます.ホリガーは自分で演奏したかったのではないでしょうか
第4楽章「アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェ」に入ると,生き生きと軽快なメロディーが続きます.シューマンはいいです
拍手の中,ホリガーが舞台に呼び戻されますが,西江コンマスの横目にも気づかず,握手を求めません.西江さんはちょっぴり不満そうです
お気持ちよーく分かります.全員をまとめているのは西江さんですからね
休憩後の1曲目はホリガーの作曲した「音のかけら」です.ホリガーが作曲もすることに驚きます 15分程度の曲ですが,一言でいえば「楽器同士のおしゃべりカオス~ひと昔前の現代音楽」といった感じの曲でした.自作が拍手で迎えられたせいか,ホリガーはやっと西江コンマスに握手を求めました.これでコンマスも”やっと自分の存在が認められた”と満足そうな表情をしていました
新日本フィルの皆さんも大変ですね.こういう曲も演奏しなければならないんですから
この日の”トリ”はラヴェルの「ラ・ヴァルス」です.1920年に完成し初演されました.ウィンナ・ワルツへのオマージュとして作曲されただけあって,フルオーケストラによって大きなワルツが奏でられます チューニングが終わると,首席ヴィオラ奏者・篠崎さんの楽器の弦が切れたのか,自身のヴィオラを後ろの木村さんと交換しています.その楽器はヴィオラ奏者のリレーによって最後部席に受け渡され,舞台袖に持っていかれました.しばし1名減の態勢で演奏が続き,5分後位に修理後のヴィオラが逆リレーで篠崎さんの手に戻りました
オーケストラにおける危機管理の一端を垣間見た一幕でした
ラヴェルは管弦楽の魔術師です.新日本フィルのメンバーは色彩感豊かにダイナミックな演奏を展開しました 新日フィル室内楽シリーズのプレトークで”夢先案内人”を務める第2ヴァイオリン奏者・篠原英和さんも満足そうな表情です
指揮者ホリガーとしては,テクニック上は専門分野からの批評があるのかもしれませんが,思い入れの強い演奏で熱くてよかったと思います
家に帰って,久しぶりにホリガーのオーボエ,オルランド弦楽四重奏団の演奏によるモーツアルト「オーボエ四重奏曲K.370」(1984年5月録音)を聴きました.往年時のホリガーのモーツアルトはやっぱりいいですね
いやぁ、良いコンサートにいらして頂きました。
実は、この直前、映画「シェルブールの雨傘」の音楽で有名なミシェル・ルグランさんと共演しまして、80歳過ぎても変わらないピアノの技術、指揮、歌感動しました。
指揮は技術ではないのです!続くホリガーさんからも、同様の印象を受けました。
鋭敏な耳、幅広い音楽の知識、何より楽員を惹きつける人間味。夢の様な4日間でした。
モーツァルトは、編成上降り番で残念でしたが、ゲネプロで聴けたので幸せでした。
仰る様に、シューマンの冒頭は、ウィーン・フィルのトランペット奏者の入団試験で出る難しい物ですが、ホリガーさんは呼吸のアドバイスをした上で「難しく考えないことだよ」とリラックスさせるコメント。
わざとも含め、緊張を増幅させる指揮者がいかに多い事か!
「音のかけら」は素敵な作品です。訳解らん現代作品が氾濫してますから。
ラ・ヴァルスは初めて納得して弾けました。
ホリガーさんが仰っていた、「このバランスで演奏してるのは、ラヴェル自身の演奏だけ!私にはベスト盤」というのを、探しに行こうと思ってます。
厳しくも楽しい4日間でした!
24日ワンコインでお目にかかるのを、楽しみにしています。