人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

崔文洙 ✕ 西山まりえ ✕ 新日本フィルでJ.S.バッハ「ブランデンブルク協奏曲 全曲演奏会」を聴く ~ 今からちょうど300年前にブランデンブルク辺境伯に献呈された6つの協奏曲

2021年05月15日 07時19分33秒 | 日記

15日(土)。わが家に来てから今日で2317日目を迎え、新型コロナウイルスのワクチン接種拡大や感染者数の減少で経済が正常化に向かう米国で、小売りや外食など人手不足に悩む企業が待遇を改善する動きが相次いでいる  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     日本で真っ先に待遇改善すべきなのは 医療従事者と 介護従事者と 保育従事者だ!

 

  昨日は諸般の事情により夕食作りはお休みしました  

 

         

 

昨日、すみだトリフォニーホールで新日本フィルのルビー第39回定期演奏会を聴きました プログラムはJ.S.バッハ「ブランデンブルク協奏曲・全6曲」です チェンバロは国内外で活躍中の西山まりえ、指揮とヴァイオリンはソロ・コンマスの崔文洙です

この曲はヨハン・セバスティアン・バッハ(1685‐1750)が1721年=今からちょうど300年前、ブランデンブルク辺境伯クリスティアン・ルートヴィヒ・フォン・ブランデンブルク(当時のプロイセン国王の叔父)に捧げた6曲の協奏曲です バッハは自筆譜にフランス語で「いくつもの楽器による6つの協奏曲(コンセール)」と名付けています 本公演に先立って開かれた白沢達生氏によるレクチャーによると、この曲は①独奏楽器による協奏曲ではなく、バロック時代に書かれた複数の独奏楽器群を擁する合奏協奏曲に近い形態で、②就職活動の一環として書かれた作品であり、③必ずしも演奏されることを前提に書かれたものではない、という特殊な作品です つまり、バッハは、ブランデンブルク辺境伯に対し、「私はこのように様々な楽器の組み合わせで楽曲を作ることが出来ます もし作曲家兼オルガニストを採用する際には候補にお考え下さい」という意味を込めて献呈したというのです 以下に順次示す通り、6つの協奏曲はまったく異なる楽器編成によって演奏されます

なお、この日のプログラムは第1番、第3番、第5番、第6番、第4番、第2番という順に演奏されました

     

     

 

拍手の中、楽員が登場し配置に着きます オケは小規模編成で、左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという並び。後方に管楽器が、その後方にチェンバロがスタンバイします

最初に演奏される「第1番ヘ長調BWV.1046」は、第1楽章「テンポ指定なし(アレグロ)」、第2楽章「アダージョ」、第3楽章「アレグロ」、第4楽章「メヌエット~トリオ1~ポロネーズからトリオ2」の4楽章から成ります この曲の楽器編成はファゴット、ホルン2,オーボエ3と独奏ヴァイオリン、弦楽5部、通奏低音(チェンバロ)の組み合わせです また、この曲だけが4楽章形式になっています

この曲で一番惹かれたのは、第4楽章におけるトリオです 最初のオーボエのデュオとファゴットによるトリオが素晴らしく、ホルンとオーボエによる2番目のトリオも聴きごたえありました

2番目に演奏される「第3番ト長調BWV.1048」は第1楽章「テンポ指定なし(アレグロ)」、第2楽章「アダージョ」、第3楽章「アレグロ」の3楽章から成ります 楽器編成は弦楽合奏とチェンバロのみで、管楽器は入りません。第1楽章を聴いて感じるのは「まるでジャズじゃん」という感覚です。心地よいリズムが刻まれ、思わず足で拍子をとってしまうほどです 第2楽章に入って、やっとチェンバロの音が立ち上がってきました 独奏ヴァイオリンとのアンサンブルが沁みます。第3楽章に入ると、再び「ジャズじゃん」の世界に突入します。ノリのいい演奏でした

プログラム前半最後の曲、「第5番ニ長調BWV.1050」は第1楽章「アレグロ」、第2楽章「アフェットゥーソ」、第3楽章「アレグロ」の3楽章から成ります 楽器編成は独奏ヴァイオリン、弦楽合奏とフルート、チェンバロです この曲ではチェンバロがステージ手前に置かれます。第1楽章の終盤における西山まりえのチェンバロ・ソロは繊細かつ上品な演奏で、思わず聴き惚れてしまいました 野津のフルートも落ち着いていました。そのせいかどうか分かりませんが、全楽章を通じてコケ脅しのないソフトな演奏に終始していました

 

     

 

プログラム後半の1曲目は「第6番変ロ長調BWV.1051」です この曲は第1楽章「テンポ指定なし(アレグロ)」、第2楽章「アダージョ・マ・ノン・タント」、第3楽章「アレグロ」の3楽章から成ります この曲の楽器編成は、なんとヴァイオリンが入らず、ヴィオラが主役となり、あとは弦楽合奏とチェンバロだけというシンプルな形式です この曲は、何と言ってもヴィオラ首席・瀧本麻衣子とフォアシュピーラー・脇屋冴子のデュオ、さらにチェロ首席・桑田歩を加えた三重奏が素晴らしかった

後半2曲目の「第4番ト長調BWV.1049」は第1楽章「アレグロ」、第2楽章「アンダンテ」、第3楽章「プレスト」の3楽章から成ります 楽器編成は独奏ヴァイオリン、フルート2,弦楽合奏、チェンバロです この曲ではフルート首席の野津雄太、野口みおの演奏が冴えていました

最後の曲は「第2番ヘ長調BWV.1047」です この曲は第1楽章「テンポ指定なし(アレグロ)」、第2楽章「アンダンテ」、第3楽章「アレグロ・アッサイ」の3楽章から成ります 楽器編成はトランペット、フルート、オーボエ、ヴァイオリン独奏、弦楽合奏、チェンバロです 言うまでもなく、この曲の最大の聴きどころはトランペットの独奏です トランペット独奏は1999年から東京都交響楽団の首席を務めている高橋敦です。彼の演奏するトランペットは通常よりかなり小型のピッコロトランペットです 第1楽章では頭の上を突き抜ける超高音の魅力を存分に発揮しました 第2楽章では崔の独奏ヴァイオリン、野津のフルート、神農のオーボエが桑田のチェロに乗せて切々と歌うメロディーが心に沁みました 第3楽章では再び突き抜けるトランペットが会場を支配しました

崔文洙✕新日本フィルはアンコールにバッハ「管弦楽組曲第3番」から「アリア」を静かに演奏、聴衆のクールダウンを図りました

こうして全6曲を聴き終わって思うことは、演奏順がよく考え抜かれていたな、ということです 1曲目に木管、金管を加えた規模の大きい第1番を据え、2曲目以降は管楽器がないか 少ない曲をもってきて、最後は祝祭的な響きを代表するトランペットが活躍する第2番で締めくくる、という周到なプログラミングでした

今回は1回のコンサートでバッハの「ブランデンブルク協奏曲・全6曲」を通して聴く滅多にない機会でした。そういう意味では貴重な体験をしました

今回も開演前と休憩時間にパトロネージュ部の登原さんとお話ししましたが、最初に声をかけたのは「コンサート、中止にならなくて良かったですね」という言葉でした これについては、登原さんも安堵している様子でした。しかし、今後 海外から招聘する指揮者・演奏家たちが予定通り来日し演奏できるのかについては相当不安があるようでした    とくに都内の楽団は政府や都の緊急事態宣言の発出によって、中止になったり延期を余儀なくされたりと、一方的に振り回されているのが現状です 気持ちはよく分かります 一日も早く正常なコンサートが開かれるように祈るばかりです また、この日のコンサートは元々、ソリストや合唱も入れてJ.S.バッハ「マタイ受難曲」を演奏する予定だったのが、コロナ禍の影響で上岡敏之氏がドイツから帰国できなくなったことや、合唱が入る曲は演奏出来なくなったという実情から、プログラムが全面的に変更され、「ブランデンブルク協奏曲全曲演奏」に落ちついた経緯があります これに関して、「バッハは、3時間もかかる『マタイ受難曲』のような大曲も作れば、この日のプログラムのような1曲が20分程度の作品でも様々な楽器による組み合わせの曲も数多く作ったという点で、すごい作曲家だったんだな、と思います」と語りかけると、登原さんは「ベートーヴェンにしてもバッハにしても、これ以上できない『完成された』天才的な作品を多く残しているので、後から出てくる作曲家は、それを超えようと努力しても結局 類似性のある作品になったりしてしまう 現代にも作曲家はいるわけですが、大変ですね」と語っていました。これについては、私がいつかどこかで読んだ3人の作曲家を巡るエピソードを紹介しました 「高くそびえる山があります バッハです。その山をコツコツと登っている一人の人間がいます ベートーヴェンです。彼に太陽が優しく微笑みかけています モーツアルトです」。限られた時間の中でいろいろな話をしましたが、短い間でもクラシックの会話が出来る人がいるというのは幸せなことだと思います


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2 コメント

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Unknown (miminga33)
2021-05-15 11:32:12
こんにちは!
昨夜は同じ会場にいらっしゃったのですね。

ブランデンブルク協奏曲を、通して聞いたのはわたしも初めてでした。曲順もわたしにはよくわからなかったのですが最初と最後が盛り上がる編成になっていて楽しかったです。
途中で飽きるかな〜と心配していたのですが、夢中になって聞いてしまいました!
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ブランデンブルク協奏曲 (tora)
2021-05-15 15:19:19
miminga33さん コメントありがとうございました。

バッハのブランデンブルク協奏曲やチェンバロ協奏曲などを聴いていると、まるでジャズだな、と思うことが多々あります。実際、ジャック・ルーシェ・トリオやモダン・ジャズ・カルテットなどはバッハの曲をカバーして演奏しています。
バッハは深くしかも広いと思います
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