14日(金)。わが家に来てから今日で3685日目を迎え、トランプ米大統領とロシアのプーチン大統領が12日、電話で協議し、ロシアのウクライナ侵攻の終結に向け ただちに交渉を始めることで合意した というニュースを見て感想を述べるモコタロです
トランプは裏で変な交渉しなかっただろうな どうもイマイチ信用できないんだよね
昨日、夕食に「茄子の肉みそ炒め」「生野菜とモッツアレラチーズのサラダ」「舞茸の味噌汁」を作り、「マグロの切り落とし」と一緒に食べました いずれもヘルシーで美味しかったです
昨夜、サントリーホールでN響2月度Bプロ定期演奏会を聴きました プログラムは①モーツアルト:アリア「私は行く、だがどこへ」K.583、②同:アリア「大いなる魂と高貴な心は」K.578、③同「交響曲第25番 ト短調」K.183、④同:レチタティーヴォとアリア「私のうるわしい恋人よ、さようなら ~ とどまって下さい、ああいとしい人よ」K.528、⑤シューマン「交響曲第1番 変ロ長調 作品38 ”春”」です
演奏は①②④のメゾ・ソプラノ独唱=エマ・二コロフスカ、指揮=ペトル・ポペルカです
最初に「アリア」があって、次に「交響曲」、そして「アリア」となり、最後は「交響曲」でコンサートを閉じる・・・こういうプログラミングは現代では極めて珍しいと言えます しかし、モーツアルトが生きていた18世紀後半においては、ごく普通のプログラミング形式でした
モーツアルトは父親あてに膨大な手紙を残していますが、1783年3月29日付の手紙(当時27歳)には同年3月22日にウィーンのブルク劇場で開催されたコンサートの模様が報告されています
それによると、当日のプログラム内容は次のようなものでした
①シンフォニー(交響曲第35番 ニ長調「ハフナー」K.385)
②歌劇「クレタの王イドメネオ」K.366からアリア「もし私が父上を失い」:独唱=アロイジア・ランゲ夫人
③ピアノ協奏曲第13番 K.415:ピアノ独奏=モーツアルト
④コンサート・アリア K.369:独唱=ヨーゼフ・アーダムベルガー
⑤セレナード「ポストホルン」K.320から「シンフォニア・コンチェルタント」(第3楽章)
⑥ピアノ協奏曲第5番K.175とピアノと管弦楽のためのロンドK.382:ピアノ独奏=モーツアルト
⑦歌劇「ルーチョ・シッラ」K.135から「私は行きます、急いで」:独唱=タイバー嬢
⑧パイジェッロの「哲学者気取り」からのテーマによるフーガと変奏曲K.398とグルック「メッカの巡礼」から「愚民の思うは」による変奏曲K.455
⑨コンサート・アリアK.416:独唱=ランゲ夫人
⑩シンフォニー(交響曲第35番K.385「ハフナー」)から最終楽章(第4楽章)
【出典:「モーツアルト事典(全作品解説事典)」(監修:海老澤敏/吉田泰輔・東京書籍)】
(tora注1)「ピアノ協奏曲」は原文では「クラヴィーア・コンチェルト」であり、モーツアルトがクラヴィーアを弾きながら指揮をした(弾き振り)と思われる。
(tora注2)原文では各曲ともケッヘル番号(K.~)は付いていない。
(tora注3)アロイジア・ランゲ夫人はモーツアルトの妻コンスタンツェの姉で、モーツアルトはアロイジアに振られてコンスタンツェと結婚したと言われている。
上の手紙から推測すると、最初にハフナー交響曲の第1 ~ 第3楽章を演奏して、真ん中にモーツアルト得意の「ピアノ協奏曲」とゲスト歌手による「アリア」を挟んで、最後にハフナー交響曲の第4楽章でコンサートを締めくくったのではないかと思います それにしても 多彩なプログラムには驚きます
(アリアの予習CD:ソプラノ=キリ・テ・カナワ、エディタ・グルベローヴァ)
さて、本番です オケは12型で、左からヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという いつものN響の並び
コンマスは郷古廉です
ソプラノ独唱のエマ・二コロフスカ は北マケドニア出身。カナダのトロントで育ち、最初にヴァイオリンを学んだ後に声楽に転向、ロンドンのギルドホール音楽演劇学校で声楽の博士号を取得 ベルリン国立歌劇場2022-23シーズンの「ばらの騎士」オクタヴィアン役でデビュー
ヨーロッパの歌劇場を中心に活躍しています
1曲目はモーツアルト:アリア「私は行く、だがどこへ」K.583です この曲はウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)が、マルティン・イ・ソレルのオペラ「お人好しの気難し屋」(台本はダ・ポンテ)の再演に際し、ソプラノ歌手ルイーズ・ヴィルヌーヴの依頼により1789年に作曲した作品です
内容は、夫が結婚生活の間に財産を浪費してしまったことを知ったルチッラ夫人が、ショックを受けつつも夫への愛を失わない心境を歌ったものです
ポペルカの指揮で演奏に入りますが、二コロフスカは透明感のある伸びやかな歌唱で、ルチッラ夫人の心情をリリカルに歌い上げました
2曲目はモーツアルト:アリア「大いなる魂と高貴な心は」K.578です この曲はモーツアルトがチマローザのオペラ「ロッカ・アッズッラの2人の男爵」に出演したルイーズ・ヴィルヌーヴの依頼により1789年に作曲した作品です
貴婦人ラウラは、ロッカ・アッズッラの2人の男爵の一人、トタロ男爵との結婚が決まっていたが、彼女の友人が策略を弄して、自分の妹サンドラを男爵の婚約者に仕立ててしまうーという内容で、この曲は男爵に初めて会った際にそのことを知ったラウラがサンドラに怒りをぶつけて歌うアリアです
二コロフスカは、次第に感情が高ぶっていくラウラの心情を、リリカルに力強く歌い上げました
3曲目は「交響曲第25番 ト短調」K.183です この曲はモーツアルトが1773年に作曲しました
モーツアルトが作曲した約50曲の交響曲の中で短調の曲はこの曲と「第40番 ト短調」の2曲しかありません
第1楽章「アレグロ・コン・ブリオ」、第2楽章「アンダンテ」、第3楽章「メヌエット・エ・トリオ」、第4楽章「アレグロ」の4楽章から成ります
ポペルカの指揮で第1楽章が開始されますが、弦楽セクションの切れ味鋭い演奏が短調の悲壮感を際立たせます オーボエがよく歌います
第2楽章では弦楽器の柔らかいアンサンブルが美しく響きました
第3楽章はかなり速いテンポで開始されますが、トリオの部分になるとテンポをグッと落とし、オーボエ、ファゴット、ホルンに充分歌わせます
この対比が素晴らしかった
第4楽章は高速テンポで走り抜けた、という印象です
終盤で郷古コンマスがソロを弾いて注目を集めましたが、この曲にヴァイオリン・ソロを披露する場面があっただろうか? ポペルカの演出か? とにかく聴き慣れない演奏場面でした
4曲目はモーツアルト:レチタティーヴォとアリア「私のうるわしい恋人よ、さようなら ~ とどまって下さい、ああいとしい人よ」K.528です この曲はサルコーネのオペラ「なだめられたチェーレレ」の歌詞に基づいており、ソプラノ歌手ヨーゼファ・ドゥシュクの依頼により1787年にプラハで作曲された「演奏会用アリア」です
イベリアの王ティターノは、シシリアの女王チェーレレの娘プロセルピナと駆け落ちするが、結婚を許さない母親に阻止され、死を命じられるーという内容で、そのティターノが別れの場面で歌うのがこのアリアです
ポペルカの指揮で演奏に入りますが、二コロフスカはこの曲でも巧みなヴォイスコントロールによる透明感のあるリリカルな歌唱で、つらいなかでも恋人を想う気持ちを見事に歌い上げました
満場の拍手とブラボーが飛び交う中、カーテンコールが繰り返されました
プログラム後半はシューマン「交響曲第1番 変ロ長調 作品38 ”春”」です この曲はロベルト・シューマン(1810-1856)が1841年に作曲、同年ライプツィヒで初演されました
第1楽章「アンダンテ・ウン・ポーコ・マエストーソ ~ アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェ」、第2楽章「ラルゲット」、第3楽章「スケルツォ:モルト・ヴィヴァーチェ」、第4楽章「アレグロ・アニマート・エ・グラツィオーソ」の4楽章から成ります
弦楽器が14型に拡大し、ポペルカの指揮で第1楽章に入ります 冒頭のホルンとトランペットによるファンファーレが、いかにも春を呼び込むように響きます
ポペルカは速めのテンポでサクサクと演奏を進めますが、”音楽が息づいている”という印象を受けます
第2楽章はゆったりと演奏される厚みのある弦楽セクションのアンサンブルが美しい
第3楽章では力強いスケルツォが演奏されますが、クラリネットがよく歌います
第4楽章ではフルート、オーボエ、クラリネット、ファゴットといった木管楽器がよく歌い、弦楽セクションが渾身の演奏を展開します
テンポを上げてなだれ込んだフィナーレは圧巻でした
全体的に、ポペルカの指揮は細かいですが、流麗な指揮ぶりで不自然さがなく、完璧にオーケストラをコントロールしている様子が窺えます
満場の拍手とブラボーが飛び交うなか、カーテンコールが繰り返されました Aプロ公演の感想(10日付ブログ)にも書きましたが、ポペルカは素晴らしい指揮者だと思います
今日は東京オペラシティ コンサートホールに東京シティ・フィルの「第376回 定期演奏会」を聴きに行きます
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