5日(火).昨夕,虎の門のJTアートホール”アフィニス”で「JTアートホール室内楽シリーズ第371回 2台ピアノの精華~児玉麻里&児玉桃」を聴きました 演奏曲目は①モーツアルト「2台のピアノのためのソナタ ニ長調K.448」,②フォーレ「ドリー」,③ストラヴィンスキー「春の祭典」(2台ピアノ版)の3曲ですこのプログラムは児玉姉妹が選んだそうです.自席は13列12番,やや後部右の通路側.256席のホールはほぼ満席です
モーツアルトの「2台のピアノのためのソナタニ長調K.448」はモーツアルトのウィーンでのピアノの生徒ヨーゼファー・アウエルンハイマー嬢のために作曲されたと言われています モーツアルトの書簡によるとアウエルンハイマーがプリモを,モーツアルトがセコンドを演奏することを想定して書き上げられたようです.1781年11月23日に彼女の自宅で開催された演奏会で初演されました
何年か前に「モーツアルト効果」なる言葉が流行ったことがあります モーツアルトの音楽を聴くと胎教に良い,あるいは頭が良くなる,あるいは酒蔵でモーツアルトの音楽を流すと酒が美味くなる,エトセトラ・エトセトラです この筆頭に挙げられていたのがこの「2台のピアノのためのソナタK.448」でした
照明が落ちて2人の登場を待ちますが,この会場では他の会場ほど照明を暗くしません.メモを取るのには助かります 舞台には2台のピアノが向い合せに設置されています.拍手の中,児玉姉妹の登場です.妹の桃が向かって左に(プリモ),姉の麻里が右に(セコンド)スタンバイします
妹の桃はラ・フォル・ジュルネをはじめ,いろいろなコンサートに登場するのでお馴染みのアーティストですが,姉の麻里の方はあまり見かけません.このシリーズには初登場とのことです
アイ・コンタクトで元気なアレグロが始まります.2人は軽快なテンポで音楽を進めます アンダンテからモルト・アレグロまで2人の息はぴったりです.明るく元気になるモーツアルトです
2曲目のフォーレ「ドリー」はピアノ連弾のための曲ですが,彼が親交の深かったエンマ・バルダック夫人の娘エレーヌのために書いたものです 1893年に着手され,エレーヌが誕生日を迎えるごとに,ほぼ1曲ずつ書き足されてゆき,最終的に6曲からなる組曲となって彼女に捧げられました.「子守唄」「ミアウ」「ドリーの庭」「キティ・ワルツ」「やさしさ」「スペインの踊り」です
今度は1台のピアノに並んで座ります.低音部に桃(セコンド),高音部に麻里(プリモ)という位置です.やさしいメロディーが流れますが,最後の「スペインの踊り」はこの曲の白眉でしょう.色彩感に溢れたリズミックな曲です
休憩後のストラヴィンスキー「春の祭典」は作曲者がオーケストラ版とは別に作った2台のピアノ版による演奏です ストラヴィンスキーはロシア・バレエ団の主宰者セルゲイ・ディアギレフの委嘱により3つのバレエ音楽を書きました.「春の祭典」「ペトルーシュカ」「火の鳥」です.「春の祭典」は1913年5月にパリでピエール・モントゥーの指揮で演奏されましたが,開演間もなく,会場は騒然となったと言われています.それまでのロマン派音楽にはない荒々しいリズム,次々と繰り出す不協和音を前にした聴衆は戸惑ったに違いありません
再び桃が左に(プリモ),麻里が右に(セコンド)スタンバイします 桃はグリーンを基調に赤いバラを配したドレス,麻里はオレンジを基調としてイエローのストライプが入ったドレスですが,たぶん,この衣装は「春の祭典」を意識して選んだものと思います
第1部は「大地の礼賛」,第2部は「いけにえ」です.普段,オーケストラによる演奏を聴いていると気が付かないのですが,2台のピアノだけで聴くと,音楽の骨組みがくっきりと浮かび上がるので,この曲がいかに革新的で破壊力に満ちた曲であるかが,あらためて分かります この曲でも2人の息はぴったりで,ストラヴィンスキーのバーバリズムを極限まで追求していました.素晴らしい演奏でした
鳴り止まない拍手に,アンコールとしてラヴェルのピアノ連弾曲「マ・メール・ロワ」から「パコダの女王のレドロネット」と「妖精の園」を演奏しました このアンコールを含めて,「優れた演奏による2台のピアノはオーケストラに匹敵する」と思いました
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